本編(リレー企画)

ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第十四話

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詠羅さん原案でのリレーシナリオです。

前回の話

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ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第十三話

第十四話

著:詠羅さん



冥界の濁った空を、レジスタンスの戦空挺が敵の部隊を迎え打とうとしていた。
既に戦いは始まり、戦空挺からの砲撃も始まっている。

グランジは一人、戦空挺の中でも小さな庭に乗り込み戦場を離れた場所で観察する。
黄昏ているような表情をみせるグランジに、ロードは複雑な心境を抱いていた。

「グランジさん」
「……?」
「来てくれて、ありがとうございます」
「構わない。鉄火山はどちらに?」
「南にある高い山です。あと15分ほどで、砲撃の射程内に」
「俺が西アクロニア平原を出てから、何分になる?」
「え……、えっと、40分ぐらいですね。キリヤナギさんの時間には間に合いませんが……」
「そうか。なら、ここでいい」

「へ?」

「アルカード」

差し出された右手に、赤い槍が形作られてゆく。
その中で、こちらの庭に気づいた分隊が蜂のように此方へと迫ってきた。

「砲撃を……」
「気にしなくていい」
「なん……」

「ブラッディストーム!!」

血の様に赤い竜巻が、分隊の全てを飲み込む。
一振りされた槍から赤い波が一気に敵を凪ぎ、まるで波紋の様に空気が裂かれ、分隊の大半が砕かれた。

ロードは何も言えず言葉を失い、グランジは涼しい顔で鉄火山を見据える。
すると、ツインの髪の少女がふわりとグランジの脇へ舞い降りた。

「とても調子がよろしくってよ」
「そうか……、ならその全てをみせてくれ」
「お任せ下さいな……」

武器に宿る少女に、グランジは僅かな熱を感じた。
かつて力を振るう事に、ここまでの高揚感を感じたことはない。
アルカードの調子の良さは、他でもないグランジの心の高鳴りを証明するものだ。
力に溺れているのならそうだろう。
だが、ハイエミルとなりキリヤナギと言う目標を失ったグランジへ救いをもたらしたのは、他でもないキリヤナギだった。
一度死んだ世界から、再び生きる世界を見せたキリヤナギは自身の自由を誰よりも許してくれている。
その許しに応えるために、グランジは自身の王の命を遂行した。

「ヴァン・スピアニア!!」

赤い閃光が放たれ、それが天空へと消える。
視認した鉄火山から、続々とDEMが排出される中、それが起こった。

爆発だ。
鉄火山の河口付近に大爆破が起こり、鉄火山の半分が陥没。
DEMの排出が止まった。



※※※



「アイアンサウス方面での援軍停止を確認。また同時に鉄火山が陥没しました」

遅い昼食のカップメンを啜っていたキリヤナギが吹き出した。
またベリアルもお湯を入れながら言葉を失っている。

「なんで!?」
「分かりません。しかし排出口が塞がれ機能停止。本隊は押し返しています」

何も言えない。
何が起こったかなど、あながち予測がてきる。

「何をしたんだ? キリヤナギ」
「いえ、あの……久しぶりの戦場でテンションを上げた従者が、武器の性能を試したんでしょう」
「ほう、いい武器だな」
「し、試作品なので危険ですが……」

苦笑しながら麺をすする。
西アクロニア平原は、ウィルスの投入後。
DEMの動きが鈍り完全制圧も時間の問題だ。
生産され、出撃してくるDEMは、指令が来ず路頭に迷っている。

「貴様、またそのような物を……」
「な、なんでしょうか、監査」
「カップ麺は摂取カロリーが高い割に、腹は膨れないと何度も話したはずだが?」
「……そこ?」
「貴様の食生活の管理には呆れるものがあるからな、野菜も摂取しろ」
「うるさいな! 野菜だって食べるよ。好き嫌いないし……」
「何も考えず食べているの間違いではないか? 早死にするぞ?」
「お母さん気取りも大概してよ! ほっといて!!」

ベリアルは後ろで呆れている。
武器の話題は後が面倒だ。
詳しく聞かれては困るために、カナトはあえてつるんで来たのだろう。
珍しく息が合ったと思う。

「DEMの生産の停止を確認しました。残存するDEM機はのこり1000機。約15分ほどで殲滅が可能かと思われます」
「勝ちだな……よくやってくれた。キリヤナギ」

「殿下のご協力があってこそのものでしょう。共に戦えた事を光栄に思います」

沈静化してゆく戦場はもう静かなものだ。
南側も戦力が十分なら心配もない。
キリヤナギは、スィーとコウガにジンを含めた彼らを迎えにゆくよう指示をだす



※※※



クレーンでつるされたDEMマザードラゴンの頭部が、首のない体の上に持ち上げられた。銀龍の体の方では、降りてくる頭部を迎えるために数名の技師が待機している。やがてすべての準備が整い、号令がかかった。頭部はゆっくりと首の接続点まで降りてくると、待機していた技師たちが素早く作業に取り掛かる。溶接する音、電動ドライバーの駆動音がするたびに、ドラゴンは本来の姿を取り戻していく。

その様子を、固唾を飲んで見守っている者たちがいた。総勢6人と一匹。クローバー、フリージア姉妹。ロディ、ロード、ヒルダとジン、それからルナだ。皆は、ただ静かにマザードラゴンを見上げている。

程なくして、技師たちがドラゴンの体から降りてきた。頭部を釣り上げていたクレーンはその役目を終えて回収される。作業を終えた技師たちが、期待する眼差しでドラゴンを見つめる。

(かあさぁ・・・お願い。戻ってきてっ)

クローバーが、目をつぶって一心に祈っている。マザーを修繕した技師たち、実際に突入任務にあたったロディたちも願いは同じ。

DEMマザードラゴンの、青白い瞳に光が灯った。

全身にエネルギーが行きわたっていく。羽に張り巡らされたエネルギーラインが、根本から先に向かって青白く明滅を繰り返した。関節が軋みを上げて動き出す。ゆっくりとだが、巨体が持ち上がった。二、三度首を振ると、ギラギラとした牙を口から覗かせる。そして、咆哮が部屋に響き渡った。技師たちの間に歓声があがる。

頭部の接続が成功したのだ。技師連中が喜びあい騒がしい中、姉妹たちは一目散にマザーの元へ走った。

「かあさまっ」
「うぅ、かあさまぁあああ!」

姉妹たちの声を聴くと、マザードラゴンの体は光に包まれ、蒼い瞳の美しい白髪の女性に姿を変えた。両腕を広げ、走ってくる姉妹を受け止める。

「おお、お前たち・・・よかった。無事で、よくぞ無事でいてくれた」
「かあさまぁ」
「ああ、もっと、もっと抱きしめさせておくれ。お前たちの暖かさを、二度と離さぬように」
「うにゅ、かあさま、かあさまぁ・・・」

豊かな胸に、泣きながら顔をうずめる二人をマザーも愛おしそうに抱きしめた。マザーコアが奪われて以来の母との再会に、二人の姉妹は抑えていた感情を吐き出し、泣きじゃくった。マザーも姉妹に頬ずりをする。その瞳には、同じように涙が光っていた。

「でも、ルピナスが」
「ごめんなさい、私たち何もできなくて・・・だからルピナスも、かあさまも」

しばらくは再会の感動に浸っていた二人だったが、急に顔を俯かせると、泣きすぎで引きつった呼吸のまま呟いた。妨害工作も無意味に終わり、ルピナスやかあさまを元に戻すこともできず、助けてくれた冒険者たちの後ろで事の顛末を観ていることしかできなかった。罪の意識と後悔が、今度は悔し涙をあふれさせようとしていた。

「すまない、俺は何もできなかった」

次に言葉を発したのは、ロディだった。その顔は俯き、姉妹たちと同じように悔しさに歪んでいる。

周りにいた技師たちは場の雰囲気に神妙な顔をしながらもこの場から去っていく。仕事はマザーの修復だけではない。襲撃のあったウェストフォートの設備修復も残っているとのことだ。去っていく技師の一人が、ジンに事情を話していた。そして、後に残されたのはもはや同じみの面々。マザー復活を成し遂げた技師たちの歓声も姉妹の泣声も収まり、静寂が辺りを包む。ルピナスの事を思うと、各々いろんな感情が沸き上がりなかなか言葉を発することができないでいる。

やがて、マザーは言った。

「良いんだ。お前たちのせいではない。元はと言えば、すべては私の油断が招いたこと。ルピナスを殺したのは、私だと言ってもいい・・・」
「そんなっ、かあさまは何も悪くはありませんっ」

悪いのはすべて自分だと言う彼女を、クローバーが即座に否定する。クローバーの言う通りだと、ジンも思った。誰も悪くなどない。姉妹は元々戦闘用の調整もされていないし、すべてが一瞬のうちに起こった事で対応などできようも無かっただろう。マザーは人質を取られ抵抗できなかったのだし、ルピナスもマザーのことを思えばこそ何も出来ずに敵の手に落ちてしまった。

ジンはあのときの戦闘を思い返している。彼女を助け出すには一撃で戦闘能力を奪うしかなかったが、あの圧倒的な力の前に自分はどうにもできなかった。せめてあのとき、狙い通り内部で炸裂できていればセンサー類の破損した隙に彼女を無力化し何か策を投じることもできたかもしれない・・・。

ふと、横にいるヒルダやロディたちを見る。彼らも考えていることは似ているのかもしれない。ああできていれば・・・こうできていたら・・・。だが、今からいくら考えたところで時は戻らず、ルピナスも戻りはしない。

「その、彼女の破壊された・・・いやご遺体はこちらで引き取ってあります。良ければ後で受け取りに来て頂けると」

ジンは苦しい表情でマザーに告げる。

「分かった。・・・お前たちには、本当に世話になった。ありがとう」

強い力を持ちながら何も出来ず、敵に利用されてしまった。しかし、最後は自壊するという手段をとってまでも愛しい者たちを護ろうとした。そんな彼女を想って、マザーは瞳を静かに閉じると、両目から涙を一筋流した。

「こんなときに、何なんだけど」
「なんだ?」

ルピナスの死を悼む姉妹とマザーに、ロディがおずおずとしゃべりだす。ロディたちが再びここに来た理由、マザーの復活を見届けること、姉妹を無事に帰すこと以外にもう一つ。

「その・・・セタリカのことなんだけどさ。彼のコアはあんたのコアの一部だったわけだよな」
「そうだ。私が危機を感じ、悪用されぬように異世界へ放出したものだ。今はここにちゃんと収まっている」
「その、あんたのコアに残っているデータからセタリカの部分を切り離して、別のDEMとして生まれ変わらせる。なんてことってできないのかな」

セタリカの復活が可能かどうかを確かめ、協力を仰ぐことである。

「・・・」
「俺と、俺の仲間。アイツは俺たち三人と、一時期一緒に暮らしていたんだ。あんなことになっちまうまで」

ロディは彼に関する真実を知ったとき、本当にどうするべきかわからなくなった。

自分たちが暮らしていた仲間の本来の姿は、目の前にいるマザーの一部。マザーが復活したことで、ジブルに破壊されたセタリカを含むすべてのDEMコアたちは元の一つに戻った。今の状態が正しい。それに、自分はルピナスを助け出すこともできなかった。なのに無理な願いをするというのも気が引ける。けれども、そうした気持ちがあってなおロディは諦めきれなかったのだった。

セタリカと共に暮らした日々が、頭をよぎる。

「俺さ。まだ、アイツと一緒にやれてないことや教えてやってないこと、いっぱいあるんだ。それは、こいつらも同じで・・・あーえーとつまり、俺たちは、できることならセタリカとまた一緒に暮らしたいって思ってるんだよ!無茶で勝手なこと言ってるって分かってる!でも、俺はアイツに戻ってきてほしいんだ。頼むっ」

必死に訴え、最後には土下座までしだすロディの様子に、ヒルダも複雑な表情を浮かべる。彼らもロディと気持ちは似ていたが、想いだけで彼らに無理強いをできないとも考えていた。マザーと姉妹たちは、土下座をしたままのロディを黙って眺めている。ジンも狼も、事の次第を見守る。

ふわりと、マザーの白い髪が揺れた。マザーの顔に優しい笑みが浮かび、青く澄んだ瞳がロディを見つめる。

「そうか、お前たちは、そんなに彼のことを・・・分かった。できるだけのことはしよう」
「本当かっ、ありがとう!」

その言葉を聞いて、ロディは土下座の姿勢から飛び上がるように上体を起こす。しかし再び地面に頭をつける。今度は懇願ではなく、喜びと感謝からだ。ヒルダはというと’お前はいっつもオーバーなんだよ’と呆れている。

そんな子芝居のような様子を遠巻きに眺めながら、ジンは想像する。ここにまだ合流していないロード、そして以前ならばセタリカもいて何かツッコミの一つでもしていたのかもしれないと......それが容易に想像できてしまうほど、この冒険者たちは’いろんな意味で分かりやすい冒険者’と言えよう。

「ひとつ、聞きたい。セタリカとは、どんなやつだったのだ?」

マザーはロディに問いかける。目の前の男がここまで必死になって帰ってきてほしいと願う、自分の中にいるセタリカという存在が、どういうものだったのか気になった。

マザーの問いに、ロディたちは一時キョトンとした顔になると、その次に視線の右上あたりを見て思い出しているような仕草をとる。

やがて、三人とも思い思いにセタリカの事を語りだした。彼らは好き勝手に、彼との思い出を吐き出していく。マザーは話を聞きながら、いつの間にか微笑んでいた。セタリカの初めて見せた笑顔と、似たほほ笑みだった。

話の外で狼のルナは一つあくびをする。いつ終わるとも知れない思い出話を聞くのに、飽きたのだろう。しかし、そのままおとなしく蹲り眠りだすということはできそうにはない。なぜなら、いつの間にか姉妹たちが傍に来ていて、彼の体を興味深々といった表情で撫で繰り回していたからである。あの変化の事がよっぽど気になると見える。

毛を引っ張られたりスキャンだと言ってやたら顔を近づけられたり、撫でまわされたり・・・
ルナは隣にいるジンに助けを呼ぶように、か細く短く鳴いては見たが、助けを呼ばれたほうはというと

「いいんじゃね。満足するまで触らせてやれよ」

そう一言気楽に言っただけで何もしようとはしない。
その数秒後、姉妹にしっぽを引っ張られて飛び上がったルナが、ジンの腹に直撃するのはまた別の話。






つづく
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