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 ←ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第七話 →ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第九話
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本編(リレー企画)

ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第八話

 ←ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第七話 →ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第九話
詠羅さん原案でのリレーシナリオです。

前回の話

ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第一話
ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第二話
ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第三話

ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第四話
ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第五話
ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第六話
ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第七話

第八話

著:詠羅さん



カナトとロードが二人で宿に戻ろうとした時、突然、足元の狼か唸り始めた。
眉間にしわを寄せカナトの前に出ようとリードを引っ張ている。
カナトは狼が暴走しないよう両手で押さえたが、進行方向に現れた影に驚いた。
三名のドミニオンが嬉しそうに頬を釣り上げ、じっとこちらを見ている。

「よう、話は聞かせて貰ったぜ。貴族サン」
「何か……? 私はその様な者では御座いません」
「ご冗談を、話は聞かせて貰ったぜ。あの城から来たんだろ? 兵隊つれてさ、いいご身分じゃねーか」

ジリジリと近づいてくる三名に、狼のルナが吠えた。威嚇の声だ。
ルナには、住民を驚かせないよう人型に戻るなと言ってある。
過剰に防衛すれば、悪目立ちをするからだ。

「ルナ、落ち着け……」

狼に気を取られているのがいけなかった。
後ろからもう一人現れ、カナトは腕を強引にまわされ、抑えられてしまう。
リードを放された狼は、カナトが抑えられた事で、さらに強い声で吠えだした。

「く、無礼な……っ」
「やめてください!何をしてるんですか!」

カナトを助けようとロードが前にでたが、間に入ってきた男に突き飛ばされ、尻餅をついてしまう。
座り込んだロードを見下ろすドミニオンは、まるで彼を諭すようにゆっくりと述べた。

「ドミニオンならわかんだろ? コイツを人質にして天界から身代金が浚えばいい。そしたら対DEMへの資金になるからな」
「は……」
「連中はハナから援助なんてしてくれやしねぇんだ、なら力づくでも奪うしかないだろ?」
「だからって……」
「お前もエミル界からきたなら言われたんじゃねえか? この世界のことなんて、知ったこっちゃねぇってな……」

ロードの思考回路にぞわりとしたものが這い寄る。
確かに、エミル族のキリヤナギも、タイタニアのカナトも言っていた。
冥界の問題に関わる気はないと……。

「あいつらは興味すらないんだよ。だから、コイツを餌にして釣ればいい」
「……私一人の為に、天界は動かない!」
「そうかい? でもいい見せしめさ、お前の家からの身代金で武器ぐらい買えるだろ」

ルナの喧しい声がずっと響いている。
カナトの指示があれば、ルナは際限なく彼らを襲うだろう。しかし、狼の牙は人間にとって致死率が高い。
力のあるルナが下手に噛み付けば、大怪我は免れず大事になる。
エミル族とドミニオン族の喧嘩ならまだしも、外交の立場にあるタイタニア族が危害を加えたとなれば、後々の外交のカードになり得るからだ。

「放せ!」
「か弱いくせに、大人しくしろ! そこの犬もうるせー!」
「……やめてください!」
「あ?」
「カナトさんは、僕らを助けに来てくれたんです! だから……」
「じゃあ、さっきの話をおさらいしよう。こいつは冥界を助けると、1回でも口にしたか?」
「え……」
「仲間を助けるとは言ってたぜ? 聞いてたからな……だが、冥界を助けるなんて一言も言ってない。つまりこいつは、口では助けると言っておいて何もする気はないのさ。そうだろ? 天界人さんよ」

力を絞られ肩に酷い痛みが走る。
彼らの述べる言葉に、何一つ間違いはない。
だからこの場で、元貴族であるロードがカナトを守れば、同種族の裏切り者とされる可能性もある。
そうなればロードはもう貴族としての立場を取り戻せない。
そう考えた時、目の前のロードがゆっくりと口を開く。

「それでも……それでもカナトさんは、僕達を助けに来てくれたんです! だから、僕は見過ごすなんてできない!」

言い切ったロードに、ドミニオンが舌打ちをする。
カナトは驚いて、しばらくは言葉を失った。
冥界の、自分の故郷の命運がかかっているのに、ロードはカナトを助けるというのだ。
国家や貴族の立場に関係なく、カナトを助けると言う。
情けないと思った。
つい先程、同じことで諭したくせに何を考えているのだと……、

「ロード殿……」
「離してください! カナトさんは僕達の仲間なんです! だから……」

カナトは無理に抵抗するのはやめた。
だが、このまま外交のカードにされる訳には行かない。
冥界へ来た時点で、こうなる可能性は予想できていた。だからその為の考えを残してある。

吠え続けるルナは、カナトの指示を待っている。
いつでも反撃ができると身構えている。
自衛手段だと認められるには、危害を加えられたと証明させればいい。
だからカナトは、敢えて相手を睨み挑発した。

「冥界に訪れた無力な観光客を巻き込み、それを人質として援助などを得るなど、慈愛も何もない。そのような事を平気で行おうとする国家になどに、だれが進んで支援をするのか。……自身の首を締めるだけだぞ! ドミニオン!」
「黙ってろ!」

抑えている男が、左腕を振り上げる。
正当防衛とさせる為には、カナト自身が誰にでも分かる怪我をすればいい。
殴られた、危害を加えられたと言う証明があれば、相手がどれほどの怪我を負っても、やむ終えないと言う証明となるからだ。

振り上げられた拳に、ロードが思わず駈け出す。
ルナもまた、人型にもどるシークエンスへ入った直後。
敵が頭に蹴りをくらい、一気に横転した。
後方から頭部に強烈な回し蹴りが入ったのだ。
カナトは敵が横転した衝撃で、床に倒されるが無傷。
敵は頭蓋が揺れたのか、傍のゴミ山へ突っ込み気絶した。

その場が一気に静まり返り、皆が固まる。
身軽な動きで鮮やかな回し蹴りを入れたのは、小柄なエミル族だった。
彼は腰に赤いレイピアを下げており、部屋着だろうと思われる、黒いワイシャツに身を包んでいる。
彼は治安維持部隊総括。総隊長、エミル・ガーディアンのキリヤナギだ。

キリヤナギは涼しい顔で3人と対峙すると、目を逸らさず睨み付ける。
しばらく固まっていた3人だったが、後ろにもう一人いる事に気付き、回れ右をした。

「ちょ、ちょっと話してただけだよ、失礼するぜ……」

動かなくなった一人を連れて、四人は立ち去ってゆく。
身長差がかなりあるのに、頭へ蹴りを入れるなどどんな運動力だ。
普段鎧で、身軽なのは理解できるがそれでもありえないと思う。
カナトはしばらくは呆然としていたが、手を貸され肩から支えられて起こされた。
酷く不機嫌な表情からみるに明らかに怒っている。

「大袈裟じゃないか? キリヤナギ」
「君は危機感なさすぎだよ。間に合わなかったらどうするつもりだったの?」
「カナト、大丈夫か?」
「ジンも、なんで一人で行かせたのさ!」
「シャワー浴びてたら居なくなってたんすよ……」
「ルナを散歩に連れ出していただけだ。ジンの所為ではなく、私の意思でもある」
「あのさぁ……」
「……反省はしている。まさかまだ、あのような賊がいるとはな」
「ベリエル陛下をリーダーとした旧皇国派と、分裂した民主主義を主張する改革派がいるんだよ。旧皇国派は、リーダーははっきりしてて話しやすいけど、改革派はリーダーらしき人がいっぱいいて、皆それぞれにうごいているからね。彼らは恐らくその一派だ。ウェストフォートは皇国派の本拠地だけど、何処にでもいるもんだね」
「目的は同じだろう? 何故分裂する必要が?」
「現状維持しかできていないからさ。DEM族に寛容的な旧皇国派に対して、改革派はDEM族を嫌っている。その辺りでも色々摩擦があるんだろうね」

「そんなに、バラバラなんですか……?」
「半端に平和だと、よくある話さ」

深くため息をつくキリヤナギは、服装が違い別人のようにも見える。
ロードは一度、足元から頭まで確認して問いた。


「あの……キリヤナギさん? ですよね……」
「……そうだよ。この服ならただの通りがかりに見えると思ってね。あえて着替えずに来たんだ。本当、鳴き声が聞こえてきて焦ったよ」

喧しく吠えていた狼は、ようやく泣き止んでカナトへ寄り添う。
それを優しく撫でるカナトに、キリヤナギはもう一度ため息を落とすと、ロードの方を見て続けた。

「君は僕に話があるんだよね」
「え……」
「聞いてあげるから、一緒に来た2人もつれて僕らの部屋においでよ。打ち合わせをしよう」

キリヤナギの優しい笑みに、ロードは思わず意表を突かれた。
エミル界で見た表情とはまるで違う。
寛容的なその表情に、ロードは救われた気分になったが、同時にカナトとジンが複雑な表情を浮かべる。



※※※



案内されたホテルルームは、建物のフロアの全てを使った最高級の部屋だった。
入って直ぐにリビングがあり、両脇に寝室への入り口がある。

ソファは円状になっていて、磨かれたテーブルの上にはグランジがティーセットを用意してくれていた。
キリヤナギの向かいに座らされたロディとヒルダ、ロードは、落ち着かない様子でキリヤナギと対峙し、キリヤナギはアレスプレートのジャケットのみを羽織って3名を迎える。

「よくここまで来てくれたものだよ。君たちの仲間を救いたいと言う気持ちは、本物なんだね」
「当たり前だろ。その為に冥界に来たんだ」
「分かってるよ。僕も目的は同じさ。セタリカを攫ったジブルを捕縛する。レジスタンスの話によれば、今朝、ジブルらしき強化外装のロボが、デムロポリス行きのルートを通過したらしい」
「!?」
「僕達も明日、レジスタンスから協力を仰いで向かうつもりだ」
「連れて行ってくれ!!」

即答したガンロディにカナトとジンの表情が凍りつく。分かっていた事だ。
分かっていた筈なのに、重い。

「デムロポリスへの道は、敵の全てがいる本拠地だ。……それでも君は向かう?」
「いく、セタリカがいるなら……」
「いるって言う保証はないんじゃ……」
「そうだね。ジンの言う通り」
「それでも、ジブルはいるんだろ? セタリカがジブルに連れて行かれたなら、いる筈だ」
「ロディさん……」
「あいつはまだ、エミル界の事をなにも知らない。まだ何も見せてやってないんだ。だから、俺が助けて連れて帰る!」

堂々と述べられた言葉に、ジンははっとした。
同じだと思う。
以前リフウを連れ戻したいと願った自分と今のロディは、形は違えど同じ意思を持っていた。
ジンは一人だと無理だったが、今のロディはどうなのだろう。

自ら行くと聞かないロディを見据え、キリヤナギは笑っていた。
いつもの笑みで笑う。
その笑をみせるキリヤナギは、ジンからすれば天然だが優しくて寛容的な人物だった。

だが、ガンロディと話すキリヤナギも、また同じ笑みを見せている。
同じ笑み。
つまり、ジンとその笑顔で話していたキリヤナギも、ずっとこうして相手と話していたのだろうか。
自分の考え通りに動く彼らを、受け入れ、嬉しくて笑っているのだろうか……。

「……仕方ないね。好きにするといいよ」
「!! いいのか?」
「行くなら止めないさ」

「総隊長。あの……」
「ジン? どうかした?」
「……ロディさん。俺らに任すって言うのは、ダメなんすか……。部隊でも一応人は集められるし」
「一度はセタリカのことを見捨てようとしたやつらのことなんて、信用できねぇな」
「ロディさん、なんてことを・・・」
「お前な、いつまで強情はってんだよいい加減にしな。協力してくれるって言ってんじゃねーかっ」
「うるせぇ、俺が行かなきゃいけねーんだよ!」

めちゃくちゃだなぁとジンは冷静だった。
しかし彼らは、以前のジンそのもので否定ができないのだ。

だからジンは決めた。
以前の自分を誇る為にも、これを否定してはいけない。
リフウを連れ戻した後、カナトはそのままいいと言ってくれたのだ。
バカなまま、愚直に、それを信じて救われた人が居るのだと、だから、これは迷ってはいけない。

「じゃあ、俺も行く」
「へ?」

「総隊長、俺、ジブルを捕まえてきます」
「そっか。一人で大丈夫かい?」
「……大丈夫、かな? ロディさんのロボ。強そうだったし」
「へぇー、僕は助かるけど」

「え、え?」
「君達の護衛として、ジンに同行してもらうことにするよ。ジブルの捕縛するためにも、僕の戦力は必要だからね」

「戦闘が発生する事は避けられないだろう? 無鉄砲すぎないか?」
「レジスタンスの協力仰げれば、安全な独自ルートを使えそうなんだけど、こればっかりは明日次第」

カナトが、酷くキリヤナギを睨んでくる。
ジンに何かあれば許さないという目に、キリヤナギは呆れた。

「その明日の会議に、僕も参加できますか?」
「? 確かロードだっけ?」
「はい。ロード・パラベラム。パラベラムは、かつてオリアス王に仕えた四天王のなかの一つです」
「へぇ、よくわかんないけど……」

「失礼だぞ! キリヤナギ」
「……冥界の豪族さん? なら、ベリエルさんなら分かるのかなぁ」

キリヤナギの曖昧な反応に、ロードは複雑な感情を抱く。
どれ程までに異界は、冥界に無関心なのだろう。

「申し訳ございません。キリヤナギは成り上がりであるが為に」
「なにそれ、冥界とか知らないし、僕が起きたの最近だし、ベリエルさんに話が通るなら、会えばいいと思うけど、聞きたいことでもあるの?」

「何か協力できるなら……」
「うーん……。名前聞いたベリエルさんの反応次第だけど、顔出したいならいいんじゃないかな。でも彼ら必死だから、あんまり歓迎する余裕なさそうだし?」
「それにしてはこの部屋、大分歓迎されてませんか……」
「彼らからみて僕は、エミル界の一戦力だからね。歓迎すれば見返りがあるかもしれないと期待されているだけだよ。でもそれでも、夕食は保存食ばかりだったし……Vip歓迎にしては大分しょっぱいな気も……」

「不味い」

グランジがようやく口を開いた。
思えばグランジは、こちらに来てから食べている姿を全くみない。
天界では、大体何か食べていたのに、口に合わなかったのだろうか。

「ギリギリの国の食料や資源を無駄に消費するだけだから、僕達はそもそも来るべきじゃないのさ。歓迎されても、出来る事はたかがしれているからね」
「しかしそれは、貴様の意地の問題かと思うが? うけた歓迎にどう報いる?」
「冗談。僕はそもそも断ったよ? これは彼らの勝手さ」

「でも、助けてくれるんですよね?」
「だれを?」
「僕たちを……」
「……そうだね。君とガンロディ、ヒルダとは協力しよう。目的が同じだからね」
「……冥界は?」
「冥界を助けた所で何の意味があるのか、僕に説明できる?」

「口を謹め、キリヤナギ」
「僕を動かしたいなら、またカナトに頼むといいよ。でも今の僕は、護衛騎士じゃなく総隊長として来ているからね。カナトに頼まれても、僕は自分の私兵しかうごかせない」
「貴様……」

「いえ、カナトさん。大丈夫です……ありがとうございます。キリヤナギさん」
「お礼は、ついて来てくれるジンに言うといい。彼は僕の命令に逆らえる立場でありながら、君達に同行すると言ってくれたからね」

「そうなのか!?」
「え? ま、まぁそうだけど、ほっとけないし……、気持ち分かるからさ」

ジンのしどろもどろした返答に、カナトはまた、ため息をつく。
そして凛とした声で言った。

「ルナ」

足元の狼が光に包まれ一気に人型へと戻る。
デフォルトの衣服をレンダリングしたワーウルフは、カナトの前で一度跪き、立ち上がった。

「ジンに同行してくれ、何が起こるかわからないからな」
「構わないが……」

「心配しすぎだろ」
「私が知りたいだけだ、何が起こったかルナを通して判断する。飼いならされた狼としてなら、警戒もされないだろう」

「そう言えば、カナトはワーウルフを仕舞ってないんだね。けど護衛なら、そっちがいいのかな」
「仕舞う……?」
「ロアは実体のない武器だからね。……グランジ」

キリヤナギの声に合わせ、グランジが右手を差し出すと、鋭い翼をもつ蝙蝠が、影のように集まり始めた。

「アルカード」

集まった蝙蝠は、グランジの手の高さに落ち着き、血のように赤い槍を形作る。
実態のないその武器に、カナトは見覚えがあった。

「ロア……!」
「そうだよ、呼びかけに合わせ、何もない場所から武器を取り出せる。心に宿していれば心に仕舞っておけるのさ」

グランジが槍から手を離すと、槍は再び蝙蝠となり小さな一人の少女となった。
美しいツヤのあるツインの髪を流す彼女は、礼儀正しくスカートをつまみ一礼する。


「カナトはワーウルフを使わないの?」
「普段から使用人として役立ってくれている。十分だ」

「キリヤナギ。俺は一応カナトの心に居るが、武器の部分だけは、ジンに宿っている」
「へぇ、じゃあ使えるのはジンなのかな?」
「そうだが……」

ワーウルフのルナがジンをみると、グランジか呼び出したツインテールの少女をじっと見ている。
彼女はジンの視線を遮るよう、グランジの後ろへ隠れてしまった。
ルナはこの二人の元へ来て、もう大分日数が経っているが、まともに武器として使われた試しがない。

「でもそれなら、僕も安心かな」
「あ、あの……、キリヤナギさん。ロアって?」
「心に宿る。感情のある武器っていう認識で構わないよ。これ以上は秘密だから、そう言うことにしておいて」

3人は何も言えず黙っていたが、キリヤナギの笑みを見て安心したようだった。
明日もまた朝から動かなければいけない為に、みな自身の寝室へと戻る。



※※※



次の日の午前に、キリヤナギはロードと廊下で落ち合い。
カナト、ロードの3人で、ベリエルの待つ執務室へ足を運んだ。
すると、場はもう用意されており、レジスタンスがキレのいい敬礼を見せてくれる。

「ご機嫌よう。お会いできて光栄です。ベリエル陛下」
「おぅ、よく来てくれたな治安維持部隊。1日遅れだが歓迎するぜ。早速だがメンツの紹介を頼む」
「はい、此方は私の監査。天界人のアークタイタニア・カナト様です」

「ご紹介に預かりました。カナトです。お会いできて光栄にございます」
「監査といえど、こんな辺境までよくきてくれた。といっても、まともな歓迎はできねぇが、ゆっくりしていってくれ」
「感謝いたします」

「そっちのドミニオンは、レジスタンスに入りに来たのか?」
「いえ、僕は、ロード・パラベラム。アッシュ、フラン家に続く、元四天王家の末裔です」
「四天王!? 懐かしいな、まだ生き残りがいたとは……」
「はい……」
「よく戻ってきたな。レジスタンスに入ってくれるのかい?」
「え……」
「その為に戻ってきたんじゃないのか?」

キョトンとするベリエルに、ロードは続ける言葉に迷った。
レジスタンスにはいれば、戦場にでなければならない。立場上エミル界にも戻れなくなるだろう。
そうなれば、ロディ達の元へ戻れなくなる。

「ベリエル陛下。ロード殿は戸惑っておられます。彼は私達をここまで導いた唯一無二のドミニオンですから」
「へぇーなるほどな。それは頭があがらねぇわ。突然勧誘して悪かったよ。だが、その気があるならいつでも言ってくれ」

カナトのフォローに、ロードはほっと肩を撫で下ろす。
だが、予想に反したベリエルの対応に若干の失望を感じていた。

「パラベラムの末裔殿がどんな話術を使ってあんたらをここまで連れてきたのは知らないが、あんた達は俺たちの現状、大方理解してるだろ?」
「ある程度は。緊迫した状況であるのは理解しております。しかし、結界の状態を見せて頂いた限り、機器のメンテナンスもちゃんと行われている為、にわかに突破される言うことはないかと」
「一応、こっちにもある程度の知識持ちはいるからな。そう言ってくれるなら安心だわ。だが、DEMの進撃はいつ来るか分からない。できる事なら次回の強襲に備えて、兵力を借りたいんだが……」

キリヤナギを睨むベリエルに、キリヤナギは敢えて目を合わせなかった。

「なるほど、お言葉ではありますが、私の部隊はあくまで、冒険者達の寄合いです。貴方方の期待に添える程のほど戦果は期待できないでしょう」
「そうなのかい? むしろ冒険者なら経験豊富そうな印象があるが……」
「それはレジスタンスへ自信家の彼らが参加しているにすぎません。しかし、ジブルの捕縛へ協力して頂けるならば、我が治安維持部隊の数名の精鋭チームが、デムロポリス内部の生産ラインを破壊を請け負いましょう」

ロードは自分の胸が大きく脈打つのがわかった。
生産ラインの破壊は、重要だ。
それをガンロディを含めた4人が請け負うなら、たしかに理にかなっている。

「ほぅ……、それはありがたいな。だが破壊しても、一月も経てば修復されちまうし、冷戦で戦闘も無けりゃ破壊してもいみないし、ぶっちゃけイタチごっこだが……。その話の前に、一つ勘違いしてないかい」
「……」
「お前らが教えたスキル使って、連中はなんかやろうとしてんだろ? 何かあったらどう責任とるんだ?」

きた。
一連の事柄の全てをこちらの責任にする事で、全ての要求を通そう言うのだ。
だがそれはただの言いがかりであり、責任を分散させる為、ロードに敢えて名乗らせた。
ジブル・フランは、冥界の貴族であったと、

「失礼。ベリエル陛下、貴方もまた誤解をされているように見受ける」
「あ? なにがだよ。天界人」
「イクスドミニオン・マエストロのジブルは、真名、ジブル・フラン。フランとは先程、ロード殿が申し上げた、冥界元四天王の中の一つでは?」
「……ちっ」
「冥界における元貴族ならば、それを管理できず野放しにした王室にも責任もある。しかも、元軍事国家であり戦う力を有していたのなら、他の世界に移動し戦力を蓄えたのも納得が行くでしょう。それをDEM族を相手にするではないのなら……」
「あーわかったよ。国が潰れた時に骨抜きにしとかなかった俺が悪かった」

「しかし事情はどうあれ、亡命したフラン家の末裔へ、新たな技術を提供した我々にも、何かしらの責任はあると考えております」
「ぉ?」
「もし、ジブル・フランにより、ここ一週間以内に新たな大戦が発生するのなら、500名の大隊を治安維持部隊より派遣しましょう」

ベリエルが固まった。
また後ろに銃剣を構える兵士も、驚いて顔を見合わせる。

「なるほど、それはありがてぇが……、やっぱりジブルか」
「我々の目的はあくまでジブルの捕縛、彼が関与していない事例には参加しかねます。それを判断する為にも、我が騎士を含めた数名のチームを、デムロポリスまで送り届けてほしい」
「もしそこで、ジブルの関与がなければ、捕縛だけして帰るってか?」


頷いたキリヤナギに、ベリエルは眉間に皺を寄せる。
ベリエルからすれば、これに了承すると治安維持部隊はもう2度と冥界には来なくなってしまう。
一回の支援はありがたいが、二回目がないのはそれはそれで意味がない。
支援は継続されなければ意味が無いからだ。

「500名規模とは嬉しいが、別にそんな気を使わなくてもいいぜ、そうだな。月に100人ぐらいきてくれりゃ十分だ。500名を月に100人、5ヶ月でいいぜ?」
「ならば、ジブルの捕縛が完了するまでの間。我々はこの世界に止まります。その間に発生した戦闘に、100人毎の援護を提供しましょう」
「なるほど……、ジブルが冥界にいる限りあんたらはこっちに止まるってことかい?」

キリヤナギが口ごもる。
ジブルが冥界にいる限りと言うことは、捕縛したジブルの身柄を治安維持部隊が確保できるまで、冥界に留まると言う流れになる。
つまり、身柄を拘束しても。ジブルがレジスタンスから、治安維持部隊に引き渡されなければ、部隊は冥界に止まり続けなくてはならない。

「あんたらの事情も理解した。こんな世界さっさと帰りたい気持ちも分かるさ。そんで、そっちの監査だが」
「私がなにか……」
「天界人なんだな? よくまぁ堂々と名乗れたものだね」
「貴方方が私をどうかしたところで、自身の首を絞めるだけでは?」
「そうだな。だが、別段何もせず返したところで、現状は変わらない。天界の態度を改めさせるぐらいのアプローチが可能なら、これ程の機会はないと思うぜ?」

キリヤナギがベリエルを睨む。
ある程度予想できていた流れだ、何もしないならその身柄を貰うと言う一つの取引でもある。
天界人と名乗った時点で、要求される事柄は跳ね上がるからだ。

「なら、ベリエル陛下。天界人の私から、一つ取引をしましょう」
「ほう? なんだい?」
「私は今回、キリヤナギの監査役ともう一つ。冥界の観光にきた旅行者です。その事実を、これによって理解して頂きたい」

カナトがポケットから取り出したのは、小型の記録デバイスだった。
ベリエルは一度それをみて首をかしげる。

「過去の大戦に使われた。対DEM用のシステムプログラムと、エミル界に降り立ったDEM達から解析した、殺戮DEM達の行動パターンマニュアルです。今回これを、貴方方へ無償提供しましょう」
「なんだと……」
「代わりに私、アークタイタニア・カナトの身の安全の保証と、キリヤナギの滞在期間。ジブルの身柄の引き渡しを、確保から3日以内として頂きたい」
「観光客で通せってか?」
「このマニュアルがあればおそらく、貴方方はキリヤナギを必要としなくとも対DEMとの戦いに有利となるでしょう。大多数の戦力を必要としなくとも戦えるならば、治安維持部隊の戦力へ頼る意味もない」
「意味はなくないさ。いくら行動パターンが分かった所で、奇襲されちゃ対応が難しいからな。……まぁいい、それは貰っておいてやるぜ、観光客のカナトさん」
「ご理解に預かり光栄です」

ベリエルは記録デバイスを受け取り、早速部下へ端末から中身を確認を急がせた。
そして最後に、一緒にいたロードへ目線をむける。

「最後だな。待たせて悪かった、パラベラム」
「え、は。はい、その……」
「そうだな。まず連れてきてくれて感謝する。流石四天王の末裔だ。信頼できる。そこでだ」
「?」
「君がこの2人を、この世界に連れてきたその話術で、どうにかこの世界に止めて欲しい」
「は……」
「やってくれるなら、レジスタンスの幹部として歓迎するぜ」
「僕はレジスタンスには……」
「あぁ、そうだったな。レジスタンスじゃなくとも、俺が率いる連中ぐらいは自由に使える権限を渡そう。もう一度その名を背負ってかえってきたなら、覚悟もあるんだろうしな」
「それは……」
「あんまり深く考えんなって、同じようにやってくれりゃいいさ。……どうだい? お二方、もう少し長居してもいいんだぜ」

「ロード殿……」

頭が真っ白になり、なにも言えなくなってしまった。
ロードは大きく深呼吸してその場の状況を考えなおす。ベリエルの目的は、治安維持部隊ができるだけ長くこの場へ止まる事だ。
だが部隊を率いるキリヤナギとカナトは、最低でもジブルを止めた後、3日以内に帰りたいと言う。
短いとは思ったが昨日の夜の出来事から、長期間滞在するとカナトが危険だと理解した。

ロードは冥界人だ。

本来なら、ベリエルの言う通り、冥界側に協力すべきだが……。

「ごめんなさい、ベリエル様。彼らは僕にとって大切な人達なんです。だから、そんな人達を、無理に引き止めるなんてできない……」
「あん……? なんだよそれ……」
「でも、パラベラムの名にかけて誓います。僕はもう一度エミル界に戻って、自分で冥界を救えるよう仲間を集める!」
「ほう……」
「このお二方の様に強くなって、自分でもう一度この名前で誇れるようになります。だから……ごめんなさい……」
「そーかい。……がっかりだよ。でもその名前に誓ってくれるなら期待していいんだな?」
「はい」

「なら話は纏まった。キリヤナギ。話がごちゃごちゃしたが、てめーはジブル関与の紛争に毎100人の援軍をよこせ。代わりにデムロポリスまでその精鋭チームを送り届けてやる。ついでに、生産ラインまで案内してやるよ」
「感謝いたします」
「観光客のカナトさんは、どうすんだい?」

「お渡ししたシステムプログラムの運用を引き受けましょう。天界人の組んだプログラムです。扱いならお任せを」
「なら頼むか。早いならそっちのがいいしな。……お前らの滞在期間はジブルを捕縛後の3日以内だ。さっさと帰ってくれ」
「お心遣いを感謝致します」

「パラベラム」
「は、はい!」
「ご要望どおり、こいつらは帰してやる。だが、必ず、こいつらか、こいつらと同等の戦力を連れかえってくれ。そしたらさっき言った通り、レジスタンスの幹部として連れてきた連中を率いてもらう」
「はい。ありがとうございます」
「時間は明日の昼だ。キリヤナギ、お前言う精鋭チームを、明日の正午に軍艦島地下に集結させろ。多くて五人だ、いいな」

「はい。早急に準備致します。ご協力に心からの感謝を」
「あっと、いい忘れたが、明日の午後にDEMの進撃が予想されてる」
「は?」
「参加しなくていいとでもタカを括ってたかい? 気にすんな。てめぇらの参戦はジブル関与の報告があってからで十分だよ。精鋭チームが仕事すりゃ、紛争も抑えられるしな」

「なるほど、ここまでのお話は、明日の紛争発生も前提となっていたのですね」
「当然だろ?じゃなかったら短期滞在なんてみとめねぇさ。だが、大分久しぶりだ。あんたらの言うジブルが仕掛けたものなら、協力しろ」

「……それならば、此方は誠意を尽くしましょう」
「よし! 決まり、働いてくれよ!お前ら!」

ベリエルは机を叩き。
三種族における会議が終了した



つづく
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