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 ←(妄想)武神の過去:グリヴァー編 →ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第六話
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本編(リレー企画)

ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第五話

 ←(妄想)武神の過去:グリヴァー編 →ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第六話
詠羅さん原案でのリレーシナリオです。

前回の話
ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第一話
ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第二話
ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第三話

ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第四話

第五話

著:詠羅さん



暑い。
夜の寝苦しさにうなされて、目が覚めれば強烈な日差しが差し込む早朝だった。
薄着で寝たのに汗が酷い。
カナトの自宅には、まだ個室に冷房が付いておらず、ジンはフラフラになりながら朝からシャワーを浴びた。
せめて扇風機だけでも導入すべきか。

カナトの部屋も覗くと此方もうなされていて、毛皮のルナが完全に干からびている。
驚いて無理やり風呂場に連れて行き、水を被らせると、ルナもようやく気を取り戻した。

「死ぬぞ。お前……」

体を震わせて水分を取り、ジンが再びずぶ濡れになってしまう。
衣服をレンダリングしなおし、人型になった彼は、申し訳なさそうに俯いた。

「すまない……」
「夏ぐらい人間でねろよ……」
「一応、夏毛なんだが……」

夏毛なのにダウンするのか、
この狼の話はもう突っ込むことすら面倒になってくる。

締め切られた窓を全開にして空気を通すと、朝の涼しい風が流れ込み暑さが抜けて行く。
カナトの部屋にも解放すると、こちらも暑さがマシになり、なんとか落ち着いたようだった。

「夏はいつもこうなのか?」
「そうだけど、今年は気温高めっぽいし? 扇風機買ってくるか……」

ジンの返答にルナはげんなりした。
しかし初めての夏だと考えると、対応しきれない気持ちも分かる。

「マラソン行く?」
「今日は遠慮する。また動けなくなりそうだからな……」

律儀に狼のまま来ようとするからだと思う。
しかし、暑さが苦手なのも分かるため、ジンはツバのついた帽子を被りランニングに出掛けた。
暑くはあるが、この前の昼間ほど酷くはない。
あの日からカナトは、新しいプールを手に入れて、次の日に入れるのを楽しみにしていたのだが、何故か昼から雨が降り出し、大分機嫌を損ねていた。
気温も上がり切らず、水を貯めても冷たい日々が続いていた為に、結局今日までプールは出来ていない。
しかし、今日は綺麗な晴れだ。
昼からはまた、暑くなるだろう。

そんな事を考えて、アクロポリスを走っていると、噴水広場の周辺をフラフラと歩く、一人の少年がいた。
見かけない顔だと思ったが、それ以前に長袖のコートを着ており、当然のように悪目立ちしている。
朝であり、気温は低いが一応夏だ。
軽く汗をかくぐらいには暑いのに、コートとは見ているだけで暑くなる。

彼は噴水広場の周辺を歩き回り、太陽を観察しているようだった。
セラミックの銀髪と頰に金属のものが見えるのはDEMか。
以前のリュスィオールのように、検証をしているのだろうか。
しかし、彼女も流石に半袖だったし、やはり暑くないのではと思う。

数分観察していても動かない為に、ジンは何もせず立ち去ろうとした。
すると、太陽をみていたDEMは、ゆっくりとバランスを崩し、床へと倒れる。



※※※



「また珍しい客を連れてきたな……ジン」
「だって、突然倒れたんだぜ? ほっとけねーよ。朝早くて聖堂も空いてなかったし……」

ソファへ寝かされたDEMの彼は、気を失い額に氷袋を置かれていた。
着ていたコートを脱がされ、薄着になった彼はDEM特有の灰色のボディを持っている。

カナトはカナトで普段より早く起こされ機嫌を崩してはいたが、ジンが気を失ったDEMを助けたいといい出し、寝巻きのまま応急処置に手を貸した。

「熱暴走だな……」
「なんだそれ? 熱中症じゃねーの?」
「熱中症がDEMで起こった場合の表現だが、仕組みが違うからな……。DEMの心臓部となるCPUは、演算処理により発熱する。しかし、それが度を超えると、基盤そのものの金属を溶かし破損する事がある」
「それやばくね?」
「基盤の損傷を回避する為、プログラムを強制ダウンさせたのだろう。熱を持っていても、CPUが止まっていれば、溶解する可能性も減るからな」

カナトはそう言って目の前のDEMの熱のある場所を探した。
コアのある胸はやはり強く発熱しており、カナトはタオル越しにもう一つ氷袋を置く。
起こせるのなら起こしたくはあるが、難しい。

「起きるのか……」
「わからん。多少学びはしたが、とってつけた知識だ。私でも正しいとは言い切れん。少なくとも、熱が取れなくては目も覚まさないだろう」

部屋の冷房をつけ氷も用意してあるのだ。
二人にこれ以上できることはない。
カナトは、ルナが用意した朝食を済ませた後。
自分でプールをだして準備を始めた。
ジンは定期的に氷袋の中身を入れ替えているが、元々熱がある所為で溶け方がすごい。
作ってある氷を全て使い切りそうなので、ジンは仕方なく、余らせていた冷却ジェルシートを沢山貼って、カナトのプールに付き合う事にした。

広いプールで寛ぐカナトは、浮き具を持ち込み、パラソルの下で水浴びを楽しんでいる。

「貴様も物好きだな」
「DEMさん。最近狙われてるって総隊長が言ってたし、心配じゃん」
「……そうだな。だがDEMは、やはり人間とは少し違う。面倒をみるにも私達には限界があるぞ」
「分かってるよ。起きたら聖堂とかラボに任せる」
「それがいい。これは憶測だが、表面温度がプログラムを稼働させる上で問題ないと判断されれば目を覚ますだろう」
「誰が判断するんだよ」
「DEM本体だな。自立駆動するために、意識とは別に稼働しているプログラムがあると踏んでいる。熱が引けばそのうち起きるだろう」

よくはわからないか、目を覚ますならそれでいい。
カナトに水をかけると、頭からそれをかぶって心地よさそうだった。
呑気だと思う。
ジンも足だけつけているが、すずしくていい。
いっそ水着に着替えて一緒にはいるか……。
ジンはそんな事を考えて、再びカナトに水をかける。



※※※



体表の温度がようやく下がり、スリープ状態となっていたシステムが再起動する。
70度近くまで上昇していた表面は、ジェルシートと冷房の風で冷やされ、自立駆動システムは、コアの起動にも問題ない判断を下した。
スリープ状態から、体のありとあらゆる場所に信号が走り、全てのチップへ通電してゆく。
始めは、最も電圧が必要なコアだ。基盤から流れ込んだ電圧はまずCPUを先に稼働させる。
その次は、体の全てのハードが信号を受け取るかチェックに入った。
記憶領域。視覚素子、腕、足。
音声出力機器は応答がない。
しかし、稼働には問題ないとし、他のハードの応答を確認した。
節々に動かない場所はあり、システムは物理的な修復が必要だと判断する。
本体のみでの修復が不可能な場合は、一度パーソナルシステムを稼働させ、修復できる環境を探すようプログラムされていた。

スリープ状態だったSetaRicaは、パーソナルシステムを再起動して意識を取り戻す。

SetaRicaが目覚めたのは午後だった。
水浴びを終えたカナトは、ずぶ濡れになっていた羽を広げ、自然乾燥に入っている。
ジンは、突然起き上がったSetaRicaに驚きはしたが、ようやく目覚めたことにほっとした。

「起きた?」
「ご機嫌よう。気分はいかがでしょうか?」

初めて見る空間だった。広い天井。広い部屋だ。
フローリングはツヤを出すほどに磨かれ、絨毯も高級そうなアラベスクが縫い込まれている。
また寝かされていたソファも、カバーが掛けられておりこちらもしっかりしていた。
全ての家具をウェブ検索しながら分析すると、通販サイトから値段まででてくる。
SetaRicaはこの情報から、裕福な家だと理解した。

目の前に座る黒羽は、ロードの物とは違う。
ロードは骨組みが分かりやすいドミニオンの翼だったが、目の前の彼は、風を受け止め飛び立つためのしっかりした翼だ。
しかし今は飛び立つ気配はない。

正座した相手を見据えていると、横から小さな机を持った大男が現れて、SetaRicaとの間にちゃぶ台ほどのテーブルを置き、装飾の入ったティーセットを持ってきた。
そのティーセットは、ウェブ検索してもでてこず、刻印された紋章のみが画像検索で引っかかった。

SetaRicaはそれを見て、ポケットのデバイスを取り出すと、一つの単語を打ち込んだ。

'メロディアス'
「筆談……? 口が利けないのですか?」
'音声出力機器が破損している'
「なるほど、……如何にも。私はカナト・F・フォン・メロディアス。堕天ルシフェルの第一後継者です」

「へー、カナトの事わかんの?」
'ウェブ検索でメロディアスが参照された。天界の外交……堕天・ルシフェル'

「この度は、ようこそ我が家へ、街で倒れていたと伺い、連れ帰ったことをどうかお許しください」
'自立プログラムが、急激な表面温度の低下を記録していた'
「それはジンでしょう。貴方の体を冷やそうと工夫しておりました」

「別に氷とかシート貼っただけだぜ?」
「適切だったのではないか?」

'予定していた時刻よりも早く目覚める事ができた。感謝する。私は固有式別名DEM_Typeθ_SetaRica'
「エミル・ガンナーのジン。えーと、セタリカでいいの?」
'問題はない'

「タイプゼロ……また、珍しい名前をお持ちですね」
「珍しい?」
「プロトタイプ、試作品に付けられる名前だ。本来なら、数値によって世代が示されるが……」

'自機の製造における情報は記録されていない'
「倒れられたのは、プロトタイプ故のシステムの古さもありそうだ」

またよく分からない話をしている。
ジンは理解を諦め、ルナが出してくれた紅茶をすすった。

'自機よりも新しいシステムが?'
「あまり詳しくはありませんが、DEMの友人は、長時間暑さに当てられても、倒れることはなかった。それはおそらく、自立プログラムが正常に動作していたのでしょう」

「リュスィちゃん? でも、リュスィちゃんは、エミル界に帰化してるって言ってなかったか?」
「帰化の話ではない。自立プログラムとは、人間で言うなら神経だ。人間が熱いものに触れたとき、条件反射で手をひくように、DEMの場合はプログラムでそれを行う。走らせるプログラムの処理が遅く、異常を知らせるのが遅れ、セタリカ殿は倒れた。本来なら自立プログラムが倒れる前に異常を知らせる筈なのにな」

'自立プログラムは、自機の意思とは別に稼働している。自機が知れるのはシステムが算出した結果のみだ'
「本人の意思とは別に動いているために、プログラムは高速化出来るよう簡略化されていなければいけないが……それが遅い理由に心辺りは?」
'この世界に到着した際の衝撃で、ありとあらゆる機器は破損したが、音声出力意外のハードウェアの修復はほぼ終えている'
「……なら、プログラムの問題か。私もここ数ヶ月で齧ったばかりですが、もしセタリカ殿がよろしければ、そのプログラムを拝見したい」

セタリカは少し迷い、デバイスのテキストツールを参照した。
そして、自機に焼き込まれているプログラムを全て手打ちで出力していく。
その猛烈な速度に、ジンは呆然と眺めるしかなかった。瞬きするたびに数行の文字列が羅列されていき、右のスクロールバーがものすごい速さで小さくなってゆく。
5分ほど経ったのち、セタリカはカナトに打ち込んだそれを見せた。
まるで異界語にも見えるそれに、カナトもまた顔をしかめている。

「わかんのかよ……」
「さっぱりだな」

堂々と即答されても突っ込みどころがわからない。

「だが、何処かで見た事がある……」
'DEMの知識があるのか?'
「いえ、何を命令しているのか分かる程度です」

「宇宙人かよ……」
「プログラムとは、本来0と1でしかない機械語を人間が読めるように翻訳したもの、積まれているコンパイラにもよるが、セタリカ殿のコンパイラがこの言語に対応していただけの話だ」

ルナの入れた紅茶が美味しい。
初めて飲んだときはただのお湯のようだったのに、大分美味くなったと、ジンは思った。
カナトはセタリカに参照されたテキストを受け取り、自身も何かを打ち込み始める。
また宇宙人語を打つのかと思いきや、今回はちゃんとしたジンにも読める言葉だ。

「父に質問してみる」
「親父さん? 詳しいの?」
「詳しいも何も本業だ。外交業の傍、ミカエル陛下と共同でナビゲーションデバイスのシステム管理をしている。父ならば、全てではなくとも何か知っているだろう」

カナトのタイピングも大分早い。
ジンなんて人差し指だけでゆっくりなのに、カナトは全部の指を使っている。
迷わず打ち終えたカナトは、迷わず父のメールアドレスにそれを送信した。

「とにかく、こちらは目覚められて安心致しました。しかし、この時期にコートとは、エミル界のことをあまりご存知ないように見える」
'太陽の光を遮れば、発熱を抑えられるのではと思った。しかし、逆にコアの放熱を妨げてしまった'
「なるほど。それならば方法が間違っていただけのこと、出来るだけ薄着になり、日傘などで光を遮れば問題はありません。しかし、遮ったっとしてもこの時期の太陽はあまり良くはない。光が強く人間の我々でも、長く居れば暑さで倒れてしまう。セタリカ殿もどうかお気をつけを」
'一度ダウンした事で、限界値は記録している。もう問題はない'

「……大丈夫ならいいけどさ。DEMさん。この世界にきたばっかなら、泊まる場所とかあんの?」
'泊まる? 休息する場所の事か'
「そうそう。寝るとこ、連盟には入ってるみたいっすけど、DEMさんが狙われる事件が増えてるみたいなんで」
'昨日まで世話になっていた家は……ある'

「ご友人が? ならば連絡を……」
'かまわない。巻き込む訳にはいかない'

「巻き込む?」
'私は、逃げなければならない'
「追われているのですか?」

うなづいたセタリカに、カナトとジンは返答に困った。

「何故ですか?」
'詳しくはわからない。だが、逃げなければ、いけない'
「……ここ最近のDEMが襲われている事件と関連は?」
'わからない。だが、ここに自機が居るのは危険だと判断している'
「ご安心を、この庭を危険に晒す事は、治安維持部隊の全てを敵に回すに等しい。この庭にいる限り、敵も攻めては来れないでしょう」
'根拠がない'

打ち込まれた言葉に、ジンはアクロポリスの惨状を思い出した。
敵は突然、街中でレールガンを放ったのだ。
確かにあれをやられるのはぞっとする。

「きにするな。私が死んだらキリヤナギが責任をとる」
「どんな投げ方だよ。俺は死にたくねぇぞ……」

カナトに何かあれば、ジンもただでは済まない。
一応護衛で、キリヤナギの代わりに居るのだ。
何もしない訳には行かない。

「……あぶり出すか」
「へ?」
「追われているのなら、いっそおびき寄せキリヤナギに捉えさせればいい」
「ど、同一人物とは限らねーじゃん?」
「違うならそれでいい。だが同じなら?」
「俺がゆるさねぇよ! あぶねぇし……」
「ほぅ、迷子のDEM殿を放置とは、治安維持部隊が聞いて呆れる」
「な……」
「お可哀想に……、友人とはぐれ、部隊員に救われたにも関わらず、最後まで助けられる事がないまま放置されてしまうとは……」

こいつ……。
セタリカは呆然と話を聞いていた。
また突然の話の切り替えしに、理解が追いついていないようにも見える。

「それとこれとは、話は別だろ!」
「貴様は私から離れられんからな。私が外出しなければセタリカ殿も助けられん。日も暮れてくる頃合いでもあるし、買い物に行きたいとは思うが?」

ジンは混乱した。つまり、外出は大前提なのだ。
そこでセタリカを友人の元へ送るか送らないかは、ジンの勝手で、行くならばカナトも付いてくるだろう。
あぶり出しとは違うが、位置が知られているなら同じだ。

「今のうちに、本部へ連絡した方がいいのではないか? 」

タチが悪い。
以前にも増して酷くなった気がする。

'私は、ロディの元へは、戻らない方が良い'

ゆっくりと打ち込まれた文字は淡々としたものだ。
だが、数秒立たずそれは削除され、セタリカはテキストツールを閉じてしまう。
奥床しい瞳を見せる彼に、2人は思わず顔を見合わせた。

「……どちらにせよ。私は少し外出します。この自宅に居れば、恐らく位置の特定に多少の時間がかかるでしょう。不安ならば待って頂いてもかまいません」

セタリカは迷った。
たしかにこの庭に来てから変な声が聞こえない。

「わかんねーの? ここ」
「ナビゲーションデバイスの位置情報は、基本的に二次元のX値とY値の座標から算出されている。上下の空間を含めたZ値は、現在のデバイスのスペックでは難しい。一般の冒険者が参照する為には、専用のアプリケーションを使い、参照する座標を特定しなければ無理だろう。ダンジョンで地下に進むたびにマップ情報の更新が必要なのもそれだ」

とりあえず普通はできないと言うことは理解した。確かに、庭にいる時の位置情報は庭にいるとしか表示されないからだ。

「この位置なら、精密に計算してもアップタウンとしか参照されないだろう。街も狭くはないからな。庭も一つではない」

確かに、冒険者の大半はアクロポリスに庭を停泊させているし、この庭は本来より低い位置にある。
見つけるには手間がかかりそうだ。

「でもてめぇは、この安全な庭から出かけるんだろ……?」
「そうだな。ようやく翼が乾いた。アイスを補充しなければならない」

なんて安直な理由だと思う。
だがジンも、セタリカをなんとかしてやりたいと思っていたし、カナトが出かけるならキリヤナギと約束も果たせる。
ここに問題が発生しないと思えば気が楽だが、報告するのは少し気が引けた。

「分かったよ。アイスは帰りでいいな?」
「構わないぞ。溶けてしまうからな」

'巻き込みたくはない'
「巻き込まれるつもりはありません。騎士団へ保護を求めるにしても、一度ご友人に会った方が良い」

「そうだぜ? きっとさがしてるって」
「一度友人に会い、保護を求めましょう。治安維持部隊、総隊長キリヤナギは私の友人です。いい加減な扱いは、私が許さない」

キリヤナギは怒っていたのだ。
あの様子をみれば、放置される事もないと思う。
カナトは、ワーウルフのルナに手伝わせ、外出用の服に着替えた。
日傘も忘れず、庭に慣れないセタリカを丁寧に地上まで運ぶ。
太陽も落ちかけており、気温は大分マシになっていた。

「ご友人の位置情報は?」

セタリカがフレンドリストを参照すると、自機のデバイスがオフライン表示にされており、友人らしきデバイスの位置情報のみが表示されている。
友人であろう、”ロディ・ガロン”、”ヒルダ”の位置は、ダウンタウンと表示されていた。
カナトはそれを確認し、セタリカのオフライン表示をオンラインに切り替える。

「入れ違いにならないよう。参りましょう」

2人に促され、セタリカはダウンタウンへ向かった。
そんな様子を見送る二つの影は、東可動橋に向かう3人に口角を吊り上げ、デバイスを閉じた。



※※※



「ちくしょぉ……何処に行ったんだよ……セタリカぁ……」

丸々1日走り回り、エミル・マエストロのガンロディは、強化外装ロボの上でうな垂れた。
朝起きてみれば、居たはずのセタリカが忽然と姿を消し、彼が着てきたコートもまたなくなっていたのだ。
何がセタリカをそうさせたのかは分からない。
過ぎったのは、連日ニュースで流れるDEMが破壊され続けているニュースだった。

巻き込まれてしまったのだろうか。
もう居ないのだろうか。
オフラインと表記された位置情報が虚しく、絶望感を助長させる。
こんな事ならば、もっと勉強して位置情報を割り出せるアプリケーションを作れればよかった。
配布されているアプリケーションは、どれもオフラインなら辿れないものばかりだ。
悔しい。
丸々1日ネットワークに繋いでいた所為で、バッテリーはもうない。
つい先程、電源が落ちてしまったのだ。
情けない。何をしてもダメだと思う。
肝心な時に役に立たないなんて、何もかも無意味ではないか。
自暴自棄になり、デバイスを放り投げてやろうとした時、後ろから声が聞こえた。

「ロディさん!!」

聞きなれた声だ。
毎日聞く、高い声。
振りかぶった腕を止めて振り返ると、ドミニオンの彼が此方へ走ってきていた。

「ロード……」
「合流できてよかった。バッテリー切れたみたいでしたから……」

「ロディ! なにしてんだよ……」
「ヒルダも……、わるい」

「それより、セタリカさんがオンラインになりました」
「な……」
「今、東可動橋みたいです。……あれ? ダウンタウンになってる」

それを聞いたロディは、ロードに確認する事もなくロボのレバーを押し込む。
飛び足すように走り出した強化外装ロボの後を、ロードもヒルダも追った。

東可動橋からダウンタウンにきたのなら、今はダウンタウンの東階段付近だろう。
階段のすぐ下は小さな広場になっているし、見つけやすい。
入り組んだダウンタウンに入られれば、位置情報があってもみつけるのは難しいからだ。

腕に力が入り手首が痛む。
だが、痛みよりも失うのが怖かった。
ヒルダと別れそうになった時のように、何もできない自分が嫌だった。
だから、セタリカを助けたいと思った。
何かできるなら、少しでも何かをしたいと思って居たから、

商店街の間をすり抜け、ロディはようやく広場の前へたどり着く。
酒場のオープンカフェが賑わう、小さな広場だ。
はやる気持ちで周辺を見回した時、
それが見えた。
セラミックの髪を束ねたDEMの少年。
違う服を着ているのはどうしたのだろう。
見慣れない2人と一緒にいる彼に、ロディは安心して、言葉がでなかった。

よかった。
迷子になって、保護してもらっていたのならいい。
心配が余計なお世話なら、それに越した事はない。
だからロディは、ロボから飛び降り、未だ此方へ気づかない彼に叫ぶ。

「セタリカ!」

名を呼ばれ、彼が此方へ振り向いた時。

それが起こった。
東可動橋の方から現れた新しい強化外装ロボが
跳躍し、ロディとセタリカの間へ轟音を立てて着地したのだ。
大質量が落下した爆圧に、ジンとワーウルフのルナが、カナトとセタリカを庇う。
また反対側に居たロディも思わず身がこわばり、尻餅をついた。

「やっと来てくれたかぁ、助かったぜぇ」

初めて聞く声だ。
後から追いついてきたヒルダは、目の前にあるもう一台の強化外装ロボに驚き、その隣に座る少女へ絶句する。

ジンとルナに庇われるセタリカは、冷静に間へ飛び込んできた相手を見ていた。
ただ呆然と、当たり前のように……。

「Lupinus」
「固有式別名DEM_Typeθ_SetaRicaと確認。内部コア、DEM-Mother_Processor_center。確認しました」
「よし、お前が最後一個だ」

伸びてきた強化外装の腕に、ジンが前に出る。
マエストロは眉間にしわを寄せ、睨みつけてきた。

「あ? 誰だてめぇ。死にたいのかぁ?」
「ウェブ検索より、治安維持部隊、貢献度ランキング6th。キリヤナギ隊、近衞騎士No.6。登録名、エミル・ホークアイ、ジン」
「ルピナス。別に聞いてねえから気にすんな」
「疑問のイントネーションを認識した為に、参照致しました」

身構えるジンに、強化外装のマエストロはふーんと鼻を鳴らす。

「とりあえずまぁ、DEM_Typeθ_SetaRica。何か言い残すことはないかい?」
「無視すんな! いきなりなんだよ!」
「あん? うるせぇな、こっちは出来るだけ静かにしたいんだよ! 部隊が来ると面倒……って、……お前、部隊員か」
「そうだよ!」
「めんどくせぇ……」

「殲滅しますか?」
「どうすっかなぁ……」

首を持ち、うな垂れていると後ろにいたセタリカがゆっくりと前に出てくる。
マエストロはそれに「お」と顔を上げ、セタリカを迎えた。
セタリカはナビゲーションデバイスを取り出し、筆談でそれを述べる。

'センター。そう聞こえた'
「そうだぜ? お前が欲しいんだよ。わかるだろ?」
'わかった。なら、それでいい'

「は!? セタリカ!?」
'彼らの狙いは自機。問題はない'
「問題ねぇって……そう言う話じゃ」

「真ん中なんだよ。そいつは、DEM_Motherの意識レベル。他の全てのコアに指令を出す中枢コアな。そいつが居ないと、他の連中が言うこときかねぇんだ」
「聞いてねぇし、分かるように言え!」

'もういい。自機を破壊するか?'
「そうするつもりだったが、中身の記憶媒体回収されたら色々だるいしな。大人しくついてくるなら許してやるぜ」
'ならそれでいい'

「それでいいって……」

何も言わずマエストロの方へ向かうセタリカに、ジンは訳が分からない。
これが彼の友人なのか?
それにしては物騒すぎる。
しかし、セタリカは危機を感じた様子もない。

「行かせるな!! セタリカは、俺らの仲間なんだ!!」

反対側から響いた声に、ジンがハッとする。
初めてみた3人の冒険者だ。
即座に強化外装へ乗り込んだロディは、ミサイルを発射。
だが、DEM_00_Lupinusがフォルムチェンジし、”ソリッドコーティング”で全て弾かれた。

「めんどくせえなぁ……。ケンカ売られたなら仕方ねぇか……」

「マスター。ナビゲーションデバイスより、位置情報が通達されています。約30名の部隊員が5分後、此方へ到着するかと」
「あー、まじか。仕方ねぇ、撤退するぞ」

「待て!!」

途端。小規模な爆発が起こり、風圧が押し寄せる。その一瞬見えたのは、セタリカの名残惜しそうな表情だった。






つづく
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