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 ←ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第三話 →(妄想)武神の過去:グリヴァー編
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本編(リレー企画)

ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第四話

 ←ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第三話 →(妄想)武神の過去:グリヴァー編
詠羅さん原案でのリレーシナリオです。

前回の話
ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第一話
ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第二話
ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第三話


第四話

著:ロディ山

・・・

ロードから貸しだされたベージュのポロシャツにジーンズを履いた姿の男(セタリカ)は、ただまっすぐに立っていた。
微動だにしない。一歩間違えれば彫刻やマネキンと間違えてしまうのではというぐらい、動かない。
さっきからせわしなく顔をさすっている隣の男とは大違いだ。

「と、いうわけで今日から一緒に暮らすことになった......」

ロディに紹介されるとSetaRicaはさっきとは打って変わってわざとらしいぐらいに手を大きく振る。
少々前身したのち、手を両足にぴしゃりとつけると、タッチスクリーンを掲げて文字を打ち込む。

「固体名、DEM_Typeθ SetaRicaでございますです皆様よろしくしやがってください」

大型のタッチスクリーン形式デバイス(タブレットデバイス)を皆に見えるように掲げて、そのまま勢いよく頭を下げてお辞儀をする。
どこで学んだのか、表彰状を受け取るときのようなお辞儀の仕方に、それを見ていた二人は思わず吹き出したのだった。

「お、お前お辞儀の仕方変だぞ」
「そうなのだろうでございますですか?」

指摘されたというのに、結局へんな言葉遣いのまま文字を打ち込む様子をみて彼女(ヒルダ)は口元で小さく笑う。
ペンでまっすぐに線を引いたような上まぶたを曲げて、愉快そうにしている。

SetaRicaは、なんとなく彼女を観察してみた。
茶色い結われた髪が彼女の笑いにつられてふるふるとゆれている。まるで尻尾か何かのようだとも思われる。
着ている黒の皮ジャケットには背中に金の刺繍、ホットパンツを履き素足にはなぜか包帯が巻きついている。
足にはトゲの目立つブーツ、その全体像からなんとなく気の強そうな印象を受けた。
ぱっと見ると男性にも見間違えそうな出で立ちではあるが、胸の辺りにわずかながらふくらみがあり、その腰のラインから女性であるということが十分伝わる。

そしてもう一つ気づいたことがある。彼女がDEM、つまり同属だということだった。
通信機能が破損しているため、固体Noや情報にアクセスすることは出来なかったが、首元からちらりと見えたグレーの肌から推測できた。

「そ、それになんか言葉も変ですね......」
「わかりませんわ、はじめてあった人には丁寧な言葉遣いで接しろさいと、あのサイトにはあったのでござるますが」

彼女のことを観察していた横から、二人目の住人が声をかけてきた。観察を中断し、すぐさま文字を打ち込み表示させタブレットデバイスを掲げる。
文字列を見ながら、彼(ロード)は妙な顔をしてSetaRicaを見つめると

「......多分、そういうことを言ってたんじゃないと思いますよ。まぁ、自然にしてくれて大丈夫ですから」

そう付け加えた。

深い紺色をし、短くまとめられた髪、人懐っこい印象をうける大きい瞳、幼さの残る丸みのある輪郭。
ベージュのポロシャツと、茶色のジーンズとワーカーブーツという動きやすくカジュアルな格好。
絵に描いたような好青年、もしくは少年というのがイメージとしてはぴったりかもしれない。
あとは背中にある濃い黒とも紫ともとれる色をした翼と、とがった尻尾。ドミニオン族と呼ばれる種族にある特徴だ。

「そうか、了解した。これよりDEM_Typeθ SetaRicaは通常モードに移行する」

セタリカは指摘されたとおり、プリセットされている言語プログラム通りに文章を組み立てることを決めて、その旨をデバイスに打ち込み表示させる。
文字を見て、ロードはようやく納得したような顔をした。

「そういえば、なぜロディの顔面は昨日よりも体積が二倍になっているのだろう」

二人の観察を終えたあと、隣で小さくイテテテ......と繰り返していたロディが気になったのでSetaRicaは聞いてみた。
昨日はなんでもなかったのに、今朝方現れたときにはすでにこの状態だった。
セタリカは人間と言う生き物が、我々DEMよりも脆弱だということを理解はしていた。
彼の顔を改めて覗き込む。
ロディの顔の体積の変化は、打撲という状態異常によるものだと推測はできる。

「ああ、これね。これには奈落よりも深く飛行城の飛行高度よりも高い、なみなみならぬ事情というものがあってだね......」

頬を痛そうにさすりながら、ロディは遠い目をする。





まずロディがソロソロと庭に入り、入り口をくぐると待っていたのはロードだった。
仁王立ちで、あきらかにいらいらとした表情でこちらを睨み付けている。

「た、ただいまぁ」
「お帰りなさい......」
「あ、えーと」
「ロディさん、僕のメール、見てくれたんですよね」
「あ、はい、ついさっき」

彼の人懐っこい目は、今は怒りのために釣りあがっている。

(やばい、これは’いつものパターン’だ)

頬を嫌な汗が伝っていくのをロディは感じた。

「簡単な家事ぐらいは、やっといてくださいって書いてありませんでしたか?」
「はい、あの、でも私にも少し事情というものがありまして」
「ええ、そういうのは仕方ない場合もあるから、別に僕だってくどくど言いません。でも、前に言いましたよね。遅くなったり帰れなくなった場合は、一言でもいいから連絡くださいって」
「はい」
「あと、これなんですか?」
「ウッ」

ロードが細長い紙をロディの前に突きつける。
その内容に、息が詰まったような声をだす。それは請求書だった。
そこにはデバイスのネットワーク使用量とサイトの請求額が、事細かに記されている。

使用量超過額、25700G
・使用サイト一覧
1、真夜中のクロニクルオンライン
・使用商品一覧
1、特選素人カーディナル、あなたの全てを癒します。
2、捕らえられた女アサシン。陥落必死、怒涛の3時間SP
3、マスタータートル監修、裸のマーメイド大陸ウォーターレイアー編


ロディがデバイス使用料を気にせず、好き勝手に購入した動画の数々。その請求書だ。

この前三人で協議して決めた上限額を、軽く二倍以上は超えた額である。
道に迷った際のナビゲーション機能やメールや通話などの各通信機能をかなりの頻度で使ったとしても、普通はこのような額にはならないのだ。
ロードが怒るのも無理はない。

「聞いたことないサイトからの請求が、こ・ん・な・に・来てたんですけど、ロディさんなにか知りませんか?」
「あはは、な、なんのことかぁ僕しらないなぁ」

少年の凄みに押されて、いつの間にかロディは正座してしまっていた。
追及してくる彼の目から逃れようとしてか、目線がうろうろと宙をさまよう。
ロードのこういうときの怖さは、いとしい彼女に手痛い一撃をくらうときよりも数倍上だ。
そんなことを思いながらふと部屋の奥を見ると、見慣れた茶色い髪が見えた。
黒い皮ジャケットの背中がさびしそうに丸まっている。
ひざを抱えて座りながら、こちらだけを振り返ると、三白眼になった眼でにらまれた。
そのままぷいっと顔を戻されてしまう。

ああ、やばいのはこっちもか。

「ちょっと、ロディさん、僕の話聞いてるんですかっ!」
「はい、聞いてます聞いてます......ひ、ヒルダぁ!」
「あっ、ちょっとっ」
「ごめんな、あの、これにはとてもとても深い事情があってな」

ロードの説教を聴くのも半ばにして、ヒルダの元へ駆け寄った。
あたふたと言い訳を始めるロディを見ようともせず、顔を下に向ける彼女の様子に、やっと収まりかけていた冷や汗が何倍にもなって流れ出した。

「な、機嫌直してくれよ......今度機会があったらそのときはちゃんと」

そう言いながらロディは、勝手に彼女の胸元に手を偲ばせようとする。
そのとき、彼女の左腕だけが装甲に覆われだした。
波がよせていくように、表面に明るいオレンジ色がのっていく。
装甲は手の辺りにくると、巨大な白い爪に変化した。まるで獣の牙を連想させる。
レーベフォーム、彼女の戦闘形態。とはいえ、いま変化が起こっているのは左腕だけだ。

「あ、いや、ちょ、ちょまっ」
「......ロディさん?」
「ギクゥ」
「いまこの状況で、そういうことに逃げようっていうのは関心できませんね」

その様子をみていたロードが、冷め切った声をして後ろに控えていた。
手をさっと引っ込めたが、遅かった。全部見られている。
声の中には、明らかに怒りが混じっている。
そんな音などしていないのに、なんか地震のような地鳴りが聞こえてきそうだ。
ロディは、背筋にせまってくる嫌な感覚に身震いした。

後ろを振り返ることができない。

「馬鹿......なんだよ。べつにいいよ、いいけどさ。......馬鹿、馬鹿、バーカっ!」

膝を抱えていたヒルダが突如立ち上がった。
茶色く愛らしい瞳をいまは怒りに吊り上げている。
黒い服には、戦闘形態になっている左腕の装甲のオレンジは映えるなぁなどと今抱くことではない感想を、ロディは抱いていた。
短い悲鳴をもらして、後ずさるが逃げ道を塞ぐように立っていたなにかに背中がぶつかる。
怖かったけど勇気を出して振り返る。

そこには、いつのまに着込んだのか戦闘用の鎧姿のロードがいた。
手には愛用のマグナムと鬼鉄弓が握られて、鈍い光を放っている。
さすがに装填されているのは、訓練用の殺傷能力の無い弾と矢だったが。

「ああ、いやその、あの」
「覚悟は出来てるんですよね?」
「お前なんか、お前なんか」

正面には牙、後ろには銃。
当然、逃げ場などない。

「ご、ごめんちゃい☆」

とりあえず笑い事にしちゃおうと、精一杯おちゃらけてみるロディであったが・・・
次の瞬間に飛んできたのは視界を埋め尽くすほどの弾幕と、音速を超えた爪の一撃だった。

(あ、これ死んだ)

この感覚を味わうのって何回目だっけ。

などと考える前に、自分の顔面にそのすべてが叩き込まれ、ロディは思考を停止した。
深夜のアクロポリスに、哀れな男の断末魔が響いた。





ここまでの経緯を哀愁たっぷりに語り終えると、やっと腫れが引いてきた顔をまた擦った。
かくして、ロディは顔面に彼ら二人の鉄槌をすべて食らい、顔面の面積を二倍に増やすこととなったのだった。

「全部ご自身の撒いた種でしょっ、まったくもう、しっかりしてくださいよ」
「お前らはもう少し加減を知れよ。連絡忘れたのとか、変なサイト見すぎて請求がやんちゃなことになってたのとか、行き過ぎたスキンシップとか、その他もろもろ悪かったとは思ってますけど」

ぶつくさと不満を言う彼。
本来なら不満を言う権利などロディには無いのだが・・・。

「あーもーほらほらこんな俺らばっかで盛り上がってちゃだめでしょ。セタリカ君が困ってるじゃないですか君たち、まずは、各人の自己紹介でもするべきではないのかねっ」

三人を交互に見つめ、首をかしげていたSetaRicaを見てロディは提案する。
はぐらかされたようで二人とも納得がいかないという顔をしたが、たしかにまだ名前を名乗っていないのは事実だった。
仕方が無いと、ヒルダとロードは向き直って改めて自己紹介を始める。

「この野郎、うまいこと逃げやがって......ああ、ごめんな。あたしの名はヒルダって言うんだ。よろしくな。まさか同属が増えることになるとはなぁ」
「僕はロード、ロード・パラベラムって言います。僕は、この羽と尻尾を見ればわかると思いますけど、ドミニオン族です。一応ホークアイをしています。というわけで、よろしくお願いしますね」
「個体体名識別 DEM_HLD-10010 呼称名 ヒルダ 個体名識別 ロード・パラベラム 呼称名 ロード 登録完了」
「んじゃ俺も改めてっ、俺の名はロディ・ガロン。エミル族のマエストロだ。あと、この庭をしきってる」
「個体名識別 ロディ・ガロン 呼称名 ロディ 登録完了」
「......お前がしきった事なんてあったかよ」
「うっせーっつーの、ここは俺の庭で、あなたたち後から来た人。わかるぅ?」
「だったら一番しっかりしてもらわないと困ります」
「うぐっ」

それぞれの名前と顔を記録し、さっそくデバイスに登録するセタリカ。
登録している間中も、まるで漫才か何かのようなやり取りが続いていた。
彼らの日常とは、かくもやかましいものなのだろう。

そんなやり取りを見ていたときだ。
SetaRicaの脳裏を、なにかの映像がよぎった。

---またフリージアがマシュマロ独り占めしたーっ---
---うふふ、油断しているクローバーが悪いんですの♪あ、このクッキーもらいっ♪’---
---うにゃあー!それ最後に取っといたチョコ入りのぉーっ!---
---フリージア、独り占めはだめだよ。皆で分け合わなくちゃ、ねっかあさま。かあさま、はいっクッキー---

私はいいから、お前たちでおあがり

---あー、ルピナスずるい。かあさまの点数稼ぎしてるー---
---そんなんじゃないもんっ!---

ふふ、ほらほら喧嘩をしないで、せっかくレジスタンスの人たちが持って来てくれたお茶とお菓子なんだ。仲良く食べないとな

---はーいっ---

「......」

突然飛来した未体験の記憶に、胸をかき乱される。
見たこともない少女が三人、お菓子を囲みながら、自分に話しかけている映像。
ところどころ砂嵐が混じって、顔がはっきり現れなかったが、自分に話しかける彼女たちの笑顔は、とても満ち足りていて幸せそうだった。

(......見たことがない?いや、そんなはずはない。確かに自分はあの子たちのことを知っている。わからない、わからないはずなのに知っている。どういうことだ?)

自分のCPUが疼く感覚に、セタリカは胸の辺りに手を置いて顔を俯かせた。

「どうした?」
「......いや、なんでもない。ちょっとしたシステムエラーだろう。しかし軽微なものだ、問題はない」
「そうか?まぁ、ともかくだ。これからよろしくな」
「了解した」

こうして、SetaRicaと彼らの日々が始まったのだった。



※※※



それからの日々は、あっという間に過ぎていった。
冒険者登録後、とりあえず仕組みをわかってもらうためにクエストを受けることになった。単純なお使いのようなものだったが、道中何度も道に迷いそうになったりしながらやっと完遂する。すると、ゴール地点に待機していた三人に「よくやった!」と抱きつかれた。
後で分かったことだが、自分で’一人でやれるところまでやってみな’と言っていたくせに、ずっと後ろをつけていたそうだ。
見たことない親切すぎる標識があったと思ったら、それらは全て先回りしていたロードやヒルダたちが仕組んだものだったらしい。

「そんなことまでされなくても、住人に道を教えてもらえば良いだけだろう。それもクエストのうちだとこのサイトには」
「よくやったなSetaRica!今日はお祝いだ!」

過保護すぎる彼らに抗議しようと、デバイスにサイトを表示させ説明しようとしたが、それはうれしそうに抱きついている彼らに見えたかは最後まで分らなかった。
抱きついてきた彼らの体温は、妙に暖かかった気がした。

~~~

「有機生命体は不便なものだな、このように加工しなくてはエネルギーを補充できないとは」
「エネルギー摂取ってだけじゃないんです。料理ってね」
「......私には分らないことだ」

あるとき、セタリカはロードから料理のことを教わった。
最初はその何たるかも分らず、目玉焼きすら真っ黒こげにしていたが、続けるうちに情報はたまっていき、どんどん出来るようになっていった。
そしてかなり上達してきたある日、晩御飯の料理を二人で作って出してみた。
まだ下準備しか任せていないというようにうそを言ったロードだが、二人が食べ始めたあたりでSetaRicaが最初から最後まで全部作ったことを告げると、彼らは驚いた顔をする。

「まじか、すげーなお前。もうこんなにうまくなったのか」
「でしょ。僕もびっくりしてるんです。セタリカ君は才能があるみたいですね」
「ングング、おかわりっ」

いつかの真っ黒なハムエッグを思い返し、上達ぶりにおどろく面々。
それよりもとおかわりを要求してくるロディを見て、ロードが呆れた顔をする。

「はいはい、ごめんセタリカ君、ご飯よそって」
「了解した」
「うん、うめぇうめぇっ」

いつものようにデバイスに表示させ、片手にしゃもじを持ち器用によそうと、それをロディに差し出す。
それだけを言ってひたすら食べるロディを眺める。
どうやらこの固体は、エネルギー効率がとても悪いらしい。
今度は何を作ってやろう。
そう考えると、不意にCPUに暖かいものが流れた気がした。

~~~

それは、ヒルダと共にダウンタウンへ買出しに出たときのこと。
頼まれたものもほとんど買い終えて、あとは庭に帰るだけとなったときだった。
ヒルダがどこかで休んでから帰らないかと提案してきたのだ。
特に断る理由もなかったので、促されるままにダウンタウンの大通り脇にあるベンチに腰をかける。
不意にヒルダが、セタリカに聞いてきた。

「あいつらのことどう思う」
「どう、とは」
「まぁ、なんつーのかな。一緒にいてどう感じるかっていうか、なんかそういうこと?」
「どう感じるか......か」
「もうある程度慣れてきたころかと思ってよ」

余りに漠然とした問いに、セタリカは首をかしげると、いつもの眠たそうな眼を向ける。

セタリカは今までのことを思い返してみた。
クエスト達成のときの大げさな喜びよう、ロードに料理のことを教えてもらったこと、ロディとあの二人のドタバタ劇。
言葉にできる感想は、出てはこなかった。ただ、CPUが妙に熱されることだけは、確かだった。

「そうだな、お前たちを見ていると、妙な感じになる。CPUが異常な発熱を起こすことがある」
「異常な発熱、ね。それって不快?」
「不快ではない、むしろ......なぜか、安定する」
「そっか、よかったよ。あいつら、毎日うっせーだろ。あんたみたいなもの静かな奴には合わないかもしれないなって思ってさ。でも、そんなでもなかったみたいだな」

そういうと、彼女はひとつ伸びをした。
つられて結われた茶髪の尻尾が動き、ベンチの背をなでる。

セタリカは不思議そうな顔で、ヒルダを見る。
DEMは自由意志を獲得したとしても、機械特有の論理的思考から抜け出すことは難しい。
今の自分が彼らにする受け答えにしろ、どうしても人間特有のいい加減さが身につかない。
機械と人の違いは、そこにあるというのを、このまえあるサイトで調べていた。
しかし目の前にいる同属は、その例に漏れず、人間特有のいい加減さを完璧なまでに身につけているように思う。
言われなければ気づかないかもしれないほどに。

人間らしい。
そういえば、あの子たちも、とても人間らしかったっけ。

---かあさまー!---

不意に呼ばれた気がして、顔を上げて振り返る。
だが、そこにあるのはただの壁だった。いつからそこに貼られているのか分らないポスターが、未練がましく壁に張り付いている。

「おい、どうした」
「いや、なんでもない。なぁ、ヒルダ」
「ん?」
「俺も、今よりもっと人間らしくなることはできるだろうか。お前のように、そうしたら、この異常な発熱や安定化する謎を、解くことができるのだろうか」
「ああ、いつか解るよ。あんたは頭が良さそうだしね」

屈託のない笑顔でそう返される。
そのときも、また頭の隅に、あの見たこともない少女たちが現れて、同じような笑顔を向けていた。

その後は二人手をつないで、家路を急いだのだった。

~~~

「お前、今度と言う今度はほんとゆるさねぇっ」
「ちょ、ちょちょっとお待ちくださいって悪気はないんですって」
「うるせぇ、黙れこのスケベバカストロっ」
「グェエエエっ!」

次の瞬間、音速を突き破る音がしたかと思うとものすごい衝撃が庭を揺さぶる。
天井からぱらぱらと塵がふってくる。食卓の上にある料理にかからないように、ロードと一緒になって皿を避難させた。
皿の上で半熟の目玉焼きと、二本のソーセージがプルプルと震える。
サラダの上にのっていたプチトマトが、皿から飛び出しそうになる。
ここの庭名物、壁ドンが行われた瞬間であった。
今でこそ、そこそこ頻度は落ちてきているらしいが、一時期は相当ひどかったらしい。
お使いを頼まれたときに、店員のオバちゃんと話をして聞いたことを思い出す。

「あんたあのお馬鹿たちのとこに住んでるのかい。苦労するだろうに。苦労っていえばあのまじめな男の子とか大変だろうねぇ。あの子はあんなにかわいくて良い子なのにねぇ、そういえば少し前まではねぇ」

彼女曰く。
アップタウン南地区は、壁ドンの音と共に目覚め壁ドンの音と下に眠る。
除夜の鐘よりも除夜の壁ドン。
噂の真偽は定かではなかったが、この様子ではかなり信憑性を帯びてくる。

「はぁ、またですか」
「だ、だってよぉ」

そういうとロディは埋まっていた壁からなんとか這い出し、体中についたホコリやら砕けたセメントやらを払いつつ情けない声を上げる。

話しは少し戻る。
それはいつもと同じ朝のこと。

今週の食事当番だったロードとセタリカは、他の二人よりも早く起きて朝食の準備をしていた。
フライパンの上で白く固まっていく卵、そして端には程よくやけたソーセージ。
ロディとヒルダは黄身は生のほうが好き、ロードはどちらかというと固め、自分は半熟。
それぞれの好みに合わせて出来上がった目玉焼きを、セタリカは皿に盛って行く。
ロードは隣でサラダをつくっていた。
ボウルに色とりどりの野菜が集まっていき、最後に載せられたのはプチトマト。
準備も後半に差し掛かろうというときに、後ろから声を掛けられる。

「うーっす」
「おはようごさいますロディさん」
「おはよう ヒルダ」
「よう、おはよう」
「おはようございます、ヒルダさん。......今日も、ここは調子いいですかっ」
「キャッ」

二人分の気だるい声が、聞こえてきた。と、思った矢先の出来事。
ロディがおもむろに彼女の寝巻きの胸元に、手を突っ込んだのだ。
そうして、なんともいやらしい手つきで彼女の胸を揉むこと数十秒。

「てめぇ......いつもいつも、ふざけんなぁ!」

彼女の叫びとともに、ロディが壁に埋められるまで数十秒。

というわけで、今日もまた、庭の壁が打ち砕かれ大穴が開いたのである。
穴から少し遠くに、飛行庭が見える。
洗濯物を干そうとしていた庭の主が、こちらに気付いて頭を下げた。
壁から抜け出したロディが、薄ら笑いで一礼している。
お隣の庭から音速を突き破り、壁を打ち砕く轟音が聞こえたら普通はもっと驚くところかもしれないが、向こうもいつものことでもうあまり気にも留めていないのだろう。
洗濯を干し終わるとそそくさと庭の中へ入っていった。

「お前、いい加減にしろよ毎朝毎朝よぉ!」
「なーんだよー、俺にはお前の胸の具合を見る権利がですねぇ。それに毎朝じゃないだろが」
「頻度の問題じゃねーんだよ馬鹿!バーカッ!」

わきわきとわざとらしい手つきをさせながら、にやにやした顔をさせるロディ。
顔を真っ赤にして怒っているヒルダの言葉で、彼が堪えているとは到底思えない。
こりゃこれからもずっと続くだろうなと、セタリカは半分閉じられたいつもの眼を二人に向ける。

「ロディさん。ヒルダさんに謝ってください。あと、またこんなことすると、朝ごはん延々おかず抜きにしますよ」
「エッ」

ロードの鋭い視線がロディを射抜く。
それでも、おかずだけでご飯まで完全に抜かないあたりが、彼らしい。

「俺も、ここは素直に従うべきだと思うぞ。ロディ」
「な、セタリカまでっ」
「ふふぅーん♪セタリカさん、ロディさんの分の目玉焼きとソーセージ食べちゃって良いですよ♪」
「ウワァアアアすいませんでしたごめんなさいっ。もうしませんっ」

ここまで信用できない ’もうしません’ も、そうそう無いと思う。

土下座するロディと、顔を真っ赤にしてぷいっと横を向いているヒルダ、その様子をやれやれという様子で眺めているロード。
なんというか、一つの喜劇を見ている気分になる。
時折、テレビで再放送している昔のコメディドラマのようだ。
面白い。

セタリカは素直に、そう思った。

「あれ、セタリカお前」
「ん、どうした」
「セタリカさん、そういう顔もできるんじゃないですか」

いち早く気づいたロディが、驚いた顔をして見つめてくる。
自分がいままでにないような表情をしていたことに、セタリカは気づいていなかった。

「よーし、んじゃあセタリカが笑った祝いだ、俺のソーセージ一本やるっ」

ロディはそういうと、自分の皿からソーセージを一本セタリカの皿に移すとうれしそうな顔をする。
セタリカは笑っていた。
それはセタリカがはじめて自分から見せた、はっきりと感情のわかる表情だった。

~~~

「よし、もういいぞセタリカ君」

セタリカはゆっくりと眼を開ける。
眼前に現れたのはいつもの細い瞳と、それから博士の黒々とした眼だった。
清潔な白いシーツの上で、身体を起こす。
もう、見慣れた博士の研究所の診察室。

「今日の修理で、デビッドの機能も回復したはずだ。......そしておおよその君の修復が完了した。ただ、すまん。どうしても君の言語出力機能だけは治せなかった」
「いいや、十分だ。感謝している」

瞳を伏目勝ちにして、こちらに頭をさげてくる博士に、セタリカはすかさず文字を打ち込んだデバイスを掲げる。
実際に博士は十分やってくれたと思う。
DEMを修復できる技術を持つ人間は、非常に少ない。
博士の修復はどれも適格だった。
ここで長きにわたりDEMを保護し、研究をしてきたと豪語するだけはある。

「まぁ会話は今みたいに、デバイスのメモ帳機能を使ってってのでもいいだろうし。ありがとう、博士。また助けられちまったぜ」
「もう慣れたさ。お前に迷惑をかけられるのは今に始まったことではないしな」
「ウッ」
「さて、これでデバイス無しでもネットワーク接続ができるぞ。君たちDEMの通信機能は私たちが使うデバイスより2~3倍は性能が良いんだ。特に」

博士の説明が始まる。
曰く、私たちDEMの情報処理能力はデバイスなどとは比べ物にならないほどに高度であり云々。
通信速度は冒険者デバイスのほぼ3倍、動画や画像も待たずに見れるのがどうこう。
ほとんど通信業者の宣伝めいているような内容だが、博士自身も興味がある事柄なのか、かなり説明に熱が入っている。

その説明を聞いている最中、セタリカの脳裏にまたあの見知らぬ少女が現れた。
ただ今回は、少女の様子がいつもと違う。
いつも現れるのは決まって三人なのに、今日は一人だけだ。
赤いドレス姿で紫色の長髪をした少女が虚ろな瞳でこちらをずっと見ている。
セタリカが頭の中の少女を見つめ返していると、その口が動いた。

---み つ け た---

「というわけだから君たちのデビットは......どうした?」
「ほらぁ、博士の話が長いからぁ」
「なんだと!?これは重要なことなんだぞ!」
「博士が情報機器に興味があることはじゅーぶん解ったけどさ。そんな一気にまくし立てられたら、DEMでもついていけないって......どうした、セタリカ」

言いあっていた二人が、怪訝な顔をしながらこちらを見ている。
立ち止まり、虚空を見つめていた彼のことが心配になったのだろう。
思えば、たびたび胸の違和感を覚えてはこんな状態になっていたような気がした。

「セタリカ君、ひょっとしてなにか不調でもあるのか。あるのなら遠慮せずに言ってくれよ」
「少し休止モードに入っていただけだと思う、とくに問題はない」
「そうか、ならよかった」

二人の不安を払拭するため、すぐさまデバイスに文字を打ち込む。
胸をなでおろすと、博士は優しく微笑んだ。
ただ、安心している博士とは対照的に、セタリカの中ではじわじわと不安が増殖していた。
みつけたと、あの少女は言っていた。
自分のことを見つけた。

みつけたら......何をするつもりなのだろう。

不安はとぐろを巻いて、彼の胸を縛り上げる。

~~~

研究所から戻ると、待っていた二人に歓迎される。
セタリカがほぼ回復したお祝いだという。いつもよりも豪勢な食事を済ませると、皆からのプレゼントを渡された。

酒をあおって顔を真っ赤にしたロディが、突然立ち上がり余興だと言ってインマウスの面をかぶって裸になって踊りだす。
止めにはいるロードを振り切って、ドタバタと分けのわからない動きをはじめるロディ。
隣ではヒルダが自身の真っ赤な顔を手で覆っている。

あいかわらず声は出なかったが、セタリカは口をおおいにあけて笑っていた。
今日は宴会だぁー!とロディは言っていたが、思い返してみれば、今までの毎日も宴会みたいな騒々しいものだった気がした。
そして、できることならこれからも彼らとそんな日々を送ってみたい。
そんなことを考えている自分がどこかにいることに、セタリカは気づいた。

---みつけた---

その間中も、少女のあの言葉はずっと頭から離れなかった。

ドンちゃん騒ぎも収まって、皆それぞれの寝所へ向かう。
二階の男子部屋のところで、ロードとロディが寝息を立てている。
ロディの寝相は相当悪いようで、いつの間にか体の位置が上下逆に入れ替わっており、ロードの顔を足先で押していた。
苦笑し、自分も今日は寝ようと布団をかぶったときだ。

頭に何か突き刺さるものを感じる。

---これでようやくそろった。手間を掛けさせやがって、まっていろよ---

見えたのはあの少女ではなく、男だった。
黒い長髪で、切れ長の眼をした男。
そいつは、片方の口角だけを器用にあげると笑いを漏らした。
こちらを見ていたが話しかけているのは自分ではない。なぜかそれだけはわかった。
鋭いナイフのような眼差しが自分を突き刺す。

「......っ」

寒気を覚えて、飛び起きた。

思わず、自分を抱きしめる。
手に力が入りすぎて、痕が残るほどに二の腕を締め上げてしまう。
こんな感覚は、ロディのところに来てから感じたことがなかった。
いや、違う。
自分は一度、どこかでこの感覚を味わっている。
無意識に首のあたりをさする。なぜだか解らなかったが妙に疼いたのだ。

あの時自分は......自分は?

---みつけた---

声が、近づいている。
そうだ、私は逃げなくては、逃げなくてはならない。
この声から、感覚から逃げなくてはならない!

布団を上げる。セタリカは、ロディと出会った頃のグレーコートに身を包むと、皆に気づかれないように庭を出た。
アップタウンの夜は深けていく。

のん気な住民たちが、セタリカがいないことに気づいたのは、翌朝のことだった。





つづく
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