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 ←シャワーシーンシリーズ:ヒルダの場合② →ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第四話
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本編(リレー企画)

ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第三話

 ←シャワーシーンシリーズ:ヒルダの場合② →ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第四話
詠羅さん原案でのリレーシナリオです。

前回の話
ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第一話
ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第二話

第三話

著:詠羅さん



「暑い!暑いぞ!! ジン!」
「うるせぇ! 夏だから暑いに決まってんだろうが!!」

冷房の効いた自宅にてアプリゲームで遊んでいたエミル・ガンナージンは、ジト目で駄々をこねる貴族。アークタイタニア・ジョーカーのカナトをみて叫んだ。
時期は真夏。
ジリジリと照りつける太陽は、アクロポリスに容赦なく降り注ぎ、その大地を焼いている。
紫外線を嫌がるカナトの意思で、低めの位置にあるこの庭だが、真夏の日差しは雲すら全て蒸発させ、真っ青な快晴が広がっていた。

「涼しくなりたい!」
「は? プールなら自分でだせよ。上の物置にあるだろ」
「あれは狭すぎる! もっと広いのが欲しい」
「ちびちびカードつかえばいいじゃん」
「ちびちびカードは、去年生産が終わってしまったんだ。広いのが欲しい!」

時刻は正午過ぎ、水浴びをしたい気持ちも分かるが、一日のうちで一番日差しがつよいこの時間に、わざわざ外に出て買いに行けと言うのか。
仕事ならまだしも、わざわざ日焼けをしてまで買い物に行きたいとは思わない。

あからさまに嫌な顔をするジンを、カナトがもどかしそうに睨む。


「……じゃあ夕方から付きあってやるよ」
「それでは明日になってしまう。気温が下がれば水浴び日和じゃなくなるだろう!」


タチが悪かった。
このカナトは外の気温を分かってて、自分をお使いに向かわせようとしているのか。
この頭の良さは、やはり時々腹がたつ。

しかし、ジンが居なければビニールプールを庭に持ち込めない気持ちも分かる。
子供用プールなら、小さく畳めば運び込めるが、大きめのプールなら庭のエレベーターの中に入らず、一度庭を下ろすか、ある程度持ち上げてから紐で吊り上げなければならない。
紐で吊り上げても、庭を下ろすにしても、二人はいる。


「じゃあお前が買ってこいよ。俺が庭下ろすからさ」
「貴様、私の護衛の癖に、一人で行かせていいのか? キリヤナギに何を言われてもしらんぞ?」


こいつ……。
ギルド評議会直属の自治組織、治安維持部隊の総隊長。エミル・ガーディアンのキリヤナギは、同組織に所属するジンにとって上司だ。
ジンはキリヤナギの命令で、貴族たるカナトの護衛をしている。


「自分が出掛けたくねぇくせに、人にお使い頼むんじゃねーよ!!」
「私は貴様の心配をしているだけだが?」


腹がたつ。
たが喧嘩するには事案が小さすぎる。カナトのこのワガママは今に始まったことではないし、暇すぎてゲームばかりしていたのも事実だ。
カナトもタイミングは理解しているようで、あからさまに暇そうにしているとこれだ。
断る理由もない為に、やはりタチが悪い。


「じゃあ、お前も来るなら付きあってやるよ。好きなん選べばいいじゃん」
「……ふむ。日焼けは避けたかったが、貴様だけ行かせるのは確かに気がひける。準備をしよう」


初めからそう言って欲しい。
たかがプールキットを買いに行くだけなのに、なぜこんなにも疲れているのか。
まだ出掛けてすら居ないのに、骨が折れる。

アクロポリスに照りつける日差しは、予想以上に鋭く、ジリジリと肌を焼く。
カナトは日傘を人型の武器、兼使用人のワーウルフ・ロアのルナに持たせ、アクロポリスへ降り立った。
この暑さにも貴族は優雅さを失うわけにはいかないのか。
大変そうだとも思い、面倒だとも思う。
ルナは人狼で、普段は狼の姿でカナトと居るが、今日は珍しく人型で降りてきた。


「今日は狼じゃねーの?」
「暑い」

流石に毛皮は堪えるらしい。
日傘など、女性が使うものだと思っていた分、異様な光景にも見えるが、貴族からすればあながち当たり前なのかもしれない。
ジンはため息をついて、周辺の露天からプールキットを探していると噴水広場のベンチに、銀髪に赤目の少女が座っている。
見覚えのある彼女は、ギルドランク3rd。DEM・リュスィオールだ。
彼女は膝に王冠とマントをつけた黒猫をのせて、優しくそれを撫でている。
あれは確か、グランジが連れていたラオだ。


「リュスィちゃん! こんなとこでどうしたの!」


名を呼ばれ、リュスィオール顔を上げた。
ラオはジンがきたことをがわかると、リュスィオールの膝で伸びをし、ふらりと膝から降りて去ってしまう。


「ごきげんよう。6thジン様。カナト様」
「休憩中?」
「いえ、外の気温を図りボディにどのような影響があるかを試算しておりました」
「は?」
「DEM以外の三種族にとって、紫外線は人体に悪影響を及ぼす危険因子はありますが、人は太陽の光を浴びなければ、自律神経に悪い影響がおこります。その上で我々、デウス・エクス・マキナも、人間に近づき心を得た事で、太陽の光の影響がどの程度あるかを……」
「とりあえずリュスィちゃん! 俺カナトと買い物にきてんだけど、一緒にどう?」
「買い物……補給、ですか?」
「補給っていうか、欲しいものがあってさ」
「なるほど、人はストレスの解消や心の維持の為に、時に必要のないものを購入し浪費する事で欲求を満たすと……」
「浪費っていうか、趣味っていうか……」


何がが違う。
リュスィオールの論理的な言葉にジンは返す言葉もなく黙ってしまった。
すると後ろから、一部始終をみていたカナトが口を挟む。


「やるべき事とやりたい事は、時に別物になり得る。自身の在る意味を理解した上で、何を望むかは、その人次第でしょう」
「義務を果たした上で、その義務とは無関係な事をあえて行う……ということですか?」
「人とは、難しい生き物なのです。義務だけでは、その心を維持できない。私も義務のしがらみから逃れる手段として、音楽を学ぶことを進められておりました。今やそれが私の趣味です」
「なるほど。心、感情が大きすぎるが故の苦悩……。与えられた命令を果たす事は、我々DEMにとっては絶対的なものである為に、そこへストレスやしがらみは存在しませんが……」
「人が心を保つには、工夫が必要なのです。続ける為には自身許し、休ませなければ、いつかは壊れてしまう」
「傷心における活力の低下は、キリヤナギ総隊長のメンタルを観察させて頂いている為に、理解は可能です」


何をしているんだと、ジンは心で突っ込んだ。
だがあの緩さなら、安易に了解もしていそうで、納得もしてしまう。


「細やかな解説、感謝致します。カナト様。自機はDEMであり、あなた方の苦悩を理解できない事をお許しください」
「人の心は成長する。リュスィオール殿の心もまた成長するでしょう。苦しみは伴うでしょうが、悪いものではない。いずれその理解がくると信じております」
「お言葉ですが、カナト様。私は治安維持部隊ランキング3rd、特務少尉です。心の成長により、任務の遂行が妨げられる可能性を私はいくつも記録して参りました。その事実から、今の自機にとって心は必要のない物と判断しております」

「それはちょい違うぜ? リュスィちゃん」


ジンが言葉を続けようとした時、リュスィオールの後ろから、必死な表情をした少女が駆け抜けていった。
女性にしては足が速く、一瞬だったことからジンは驚いて振り返る。
すると、目があったカナトが絶句した表情をしていて、


「ジン、伏せろ!!」


え? と、間抜けな声を上げた直後。
人型のワーウルフのルナがカナトを庇い、ジンの腕を掴んで床へ倒した。
途端、真横に青い閃光が走り抜け、爆圧。
衝撃波で、噴水広場のベンチや植木鉢が吹き飛んだ。
何がおこったのか理解出来ず、ジンは倒れたまましばらく硬直する。


「何がおこった!?」


カナトの叫びにようやく我に帰る。
飛び起きて辺りを見渡すと、南の飛空庭空港が砲撃のようなものを受け大破していた。
衝撃波で露店は吹き飛び、テラスも半壊している。

それを確認した後、ジンは目の前にいたリュスィオールを探した。
すると、純白の猫耳のついた三角帽子のDEMが、リュスィオールのいた場所へ浮遊している。


「対防御体制、マギカフォーム。敵、強化外装を視認、イクスドミニオン。ギルド評議会冒険者連盟のライブラリより、登録者と認定。治安維持部隊ランキング3rd。DEM・リュスィオールの権限により、規約違反から確保します」


浮遊し、摩擦から解放された彼女は一目散に敵へ向ってゆく。
彼女の周辺に構築されたのは、七色の光を帯びる刃だった。
リュスィオールの魔力によって生成されたそれは、加減する事で敵を無傷のまま確保できる。


「”クロッシングエッジ!!”」


放たれた剣は曲線を描いて、敵の強化外装へ突き立つ。
だが、その刃はバリアの高い音に全て弾かれてしまった。
物理攻撃を無効にする”ソリッドコーティング”だ。


「あぶねぇー!助かったぜ」


若い男の声だ。
リュスィオールが狙った敵は、強化外装ロボにのったイクスドミニオン。
彼はベイルアウトを使って、自らが破壊した空港へ向かうと、その付近に倒れるボロボロのDEMの少女を見据えた。

リュスィオールはそれを見て、更に攻撃を加えようと身構えたが、敵との間に現れたもう一人のDEMに、焼き込まれたアルゴリズムが混乱を起こす。


「Lupinus……!?」

敵の横にいるDEMは、リュスィオールとは違い薔薇の装飾の付いた金のDEM、ノワローゼスフォルムを纏い、マエストロの敵を守るように立っている。
その後ろで守られるイクスドミニオンは、レールガンが直撃して動かない少女の胸に、強化外装のアームを押しこみ何かを抜き取った。
DEMの人間で言う心臓。CPUだ。
これを抜き取られたDEMは、ただの鉄くず同然となってしまう。
リュスィオールは、思わず自分の胸を押さえた。


「何故、あなたが……」
「量産型人型DEM、生産No.003254789654」

「なんだLupinus。知り合いか?」
「いえ。個体ナンバーを参照したにすぎません。マスター」

「マスター……!? そんな……?」
「ふぅん。Lupinus。お前有名なんだな」

「……」
「まぁいいや。面倒だし、潰せ」
「管理者権限により、承認致しました。これよりDEM_00_Lupinusは、敵殲滅シーケンスにはいります」


リュスィオールは冷静だった。
知り合いと言うものではなく、彼女はDEMならば、皆知っている個体だからだ。
ディスクに記録された記憶の中にある。未体験の記憶。
情報としてあるそれを、この世界に存在するすべてのDEM達は、必要な情報として理解しているだろう。
DEMはこの世に生まれ、構築されたときから必要な知識の全てを記録されて製造される。
よって会ったことはなくとも、存在は知っている。
その記憶にあDEM_00_Lupinusは、マザーを守護をつかさどる戦闘特化のDEMだ。
対人間にカスタマイズしたリュスィオールと、限りなく戦闘に特化したLupinusが、こんな場所で本気で戦えばアクロポリスそのものが沈みかねない。

野次馬が集まり始める中、リュスィオールは武器を下ろした。
そして、あらかじめ組み込んであるフォルムへ変更。
音を立ててパーツが切り替わり、長い耳を持つレプスセットへと切り替えた。

物理型長距離砲撃に特化したフォルム。
敵を一撃で破壊するためのセットだ。
リュスイオールの選択は、最大火力から一撃でとどめを刺すこと。
損害を避けた上で戦うためには、それしか方法がない。

このフォルムをみた敵は、関心したような表情を浮かべ、自らの周辺へと目を向ける。
殲滅指示をうけたDEM_00_Lupinusは目の前に現れたレプスDEMを破壊するため、分析に入っている。
その中で数多の目がこちらに向いていることは、空港を破壊したマエストロにとってデメリットしかない。
顔を覚えられれば、動きにくくなる。
DEMは人間とは違い、記憶が記録として残る為、騎士団や治安維持部隊に自分たちの情報が渡るのは面倒だ。
冷静になり、マエストロは指示をだす。

「Lupinus。命令をキャンセルする。ガラスフロムレンで退却だ」
「承認しました。これより、指定地域へ転送します」
「!? 待ちなさい!!」

転送魔法”ガラスフロムレン”の風圧を感じたと思うと、目の前には半壊した飛空庭空港と、胴体に大穴が開いたDEMの少女の残骸が転がっているだけだった。





※※※



ジンとカナトが連れてこられたのは、キリヤナギの執務室だった。
冷房の効いたこの部屋に、ジンとカナトは、グランジにお茶をだされ、向かいにもリュスイオールも座っている。
ジンは納得がいっていなかった。
いつもなら、扇風機も冷房もない部屋で適当に話すだけなのに、なぜか今日は、いつもとは違いキリヤナギの執務室に通されたのだ。
グランジにも移動しなくていいのかと聞いたが、

「キリヤナギが来る。待っているといい」

この返答だ。
カナトは、狼となったルナを足元に伏せさせて、優雅に紅茶を啜っている。
一体いつもと何が違うのだろうか。待遇が違いすぎて、不安にもなってくる。
考える気力も失せて、ソファへ横になってやろうかと思った時、
ようやく執務室の入り口が開いて、キリヤナギが現れた。

「ご無事で何よりです。我が君」
「挨拶はいい。早く話を聞かせろ」


カナトのぴしゃりとした言葉に、キリヤナギが顔をしかめる。
呆れたため息もついて、彼は自分の机に座った。


「街はもう大丈夫さ。帰っても平気だよ」
「ほう……。話したくはないか?」
「話す意味があるとは思えないだけさ。ジンならまだしも、君は限りなく無関係だからね」


えらく機嫌が悪いとカナトは感想した。
いつもなら笑いながら話に応じるのに、珍しい。

「俺もききたいんすけど、あれ結局なんだったんすか……?」
「……ここ数カ月で、DEMさんが襲われて胸のCPUを抜かれる騒ぎが続いていてね。それがついに、このアクロポリスで白昼堂々おこったんだよ。警戒はしていたんだけど、まさか町のど真ん中でやられるなんて……」

「事件にしてはえらく大胆だな……」
「よほど自信があったんだろうね。被害にあったどのDEMさんも連盟に加入するまえに破壊されて、部隊じゃ手が付けられない」
「なるほど、それでその機嫌が悪さか。貴様も律儀だな」
「それだけじゃないよ。無関係な君に内情を知らせたくないだけさ」
「安心しろ。個人的な興味だ。関わる気はない」
「信用出来ないし……」

不毛な会話だとジンは思った。
だが今回はどっちもどっちだと思う。

「だが、アクロポリスの町で起こった騒ぎならば貴様も動かざる得ないのではないか?」
「そうだね。今回はじめて、リュスィオールが、自分の記憶領域から加害者の写真を呼び出してくれたし、一応割り出しはできたかな」
「どんな奴っすか?」
「イクスドミニオン・マエストロのジブル。”ナビゲーションデバイス”のアプリケーション開発のエンジニアだね。ネットワークに詳しいみたいで位置情報が追えなくてさ」
「追えない? 可能なのか?」
「ネットワークにつながっている時点で、そんなこと無理だとおもうんだけど、彼のデバイスを検索しても確認ができなかったんだ。持ってないか、壊したか、別の機器からアクセスして他人を装ってるか……、考えられる事案は膨大にあるから、今は特別チームをつくって地道に探してるよ」

冒険者連盟に加入しないDEMと言われ、カナトは少し引っ掛かりを感じた。
連盟は基本的に、自分を冒険者だと名乗る人間に向けて発行されるものだ。
よって自分の意志で申請に向かう必要があるのだが、持っていないという事はつまり、”まだエミル界に来たばかりのDEM達”が狙われているという事になる。
持つべき盾を持たぬまま破壊され、殺されている。
キリヤナギが苛つくのも仕方がないだろう。
騎士は領地を守る武器だ。
自分の領地で、白昼堂々騒ぎを起こされれば、黙っていられる訳がない。

キリヤナギの怒りは理解したが、問題は狙われたDEM達だ。
敵が連盟に未加入のDEM達を狙う意味に、カナトは一つ心辺りがある。


「口封じか……」


カナトのボヤキにキリヤナギが眉をひそめる。
これだから、話たくはなかった。


「自分の立場。わかってる?」
「理解している。その上で詳しく聞きたい」
「関わらないって誓う?」
「聞いてから判断する」


キリヤナギはジト目で口を噤んだ。
エミル界に亡命しようとしたDEM達が狙われているのか。
非常な話だと思うが、確かにカナトの力ではどうにもならないし、キリヤナギが話したがらないのも分かる。
カナトなら、助けたいと思うとキリヤナギは憶測しているのだ。

「私自身がどうしたいかなど、私の勝手だとおもうが?」
「僕は立場上、話すとウォレスさんに怒られそうだし? 君は君の友達にきいてよ」

えらく投げやりな態度だとは思う。
だが、確かにキリヤナギに聞いたからというならば、責任は確かにキリヤナギになる。
キリヤナギはウォーレスハイムから、”カナトを頼む”と任されているのだ。
カナトがどうするかは勝手だが、カナトが行動するきっかけを与えたと言われてしまうは避けたい。

隣にいるジンは、まためんどくさそう話をしているとむくれている。
ジンはずっとここにいて、何も聞かされてはいないだろうし、カナトは目の前の彼女へと視線を向けた。

DEM・リュスイオール。
うつむく彼女は、出された紅茶の水面を眺め微動だにしない。


「リュスィオール殿。もしよろしければ、今回のお話を聞かせて頂けないでしょうか」
「……カナト様。それはどの意志をもってのお言葉でしょうか? 私は治安維持部隊ランキング3rd。キリヤナギ総隊長の意思に背くことは避けたく思います」
「本日対面し、心について話した友人として、私は貴方の知る範囲を把握したいと思っている。話したくないのであれば、あきらめましょう」

リュスィオールは少し驚いて、もう一度考えた。
心についてリュスィオールはまだまだ知らないことが多い。
素直に分からないといったら、カナトはその心についてわかりやすく答えてくれた。
理解はできないのに、そういうものであると説明してくれた。
わざわざ説明してくれたのに、結局拒絶して、こちらは何も返せていない。
そう思うと、知らないことは教え返したいと思った。

「まず、冥界が今どの様な状況にあるか、お二人はご存知でしょうか」
「……存じません。冷戦状態にあるとしか」
「はい。しかしこの冷戦も、数十年前の大戦によりもたらされたものなのです。冒険者連盟が発足して間もないころ。冥界は未だ戦場でした。その中で冒険者達は、自分の好奇心から冥界の戦争へ加担し協力していったのです。冥界はそれを受け入れ、冒険者達とともにDEM達と戦い、敵のメインコントロールルームに在る。DEM・マザーとの和解に成功しましたが……」
「和解……したのに冷戦か……」
「はい。DEM・マザーは、自我はあれどその意思は争いを望んでは居なかった。生み出された殺戮のDEM達は、DEM・マザーの意思に関係なくただその行為を続ける傀儡にすぎなかった……」

「悪いやつがいなかった?」
「はい。しかし、DEM・マザーと和解した事で、新たな殺戮DEMの生産は抑えられ、ここ数十年は新たな大戦も起こらず冥界は、ウェストフォートを維持、攻略戦においてアイアンサウスまでを奪還しています」
「へー」

「そのお話と、今回の事件の関係は?」
「……DEM・マザーは、人間と和解した事で、新たな心を持つDEM達が生まれるよう。システムプログラムの改変を測っていた。しかしDEM・マザーは自身がその基盤プログラムを積んでいるために、自身の書き換えは不可能です。よってそれを書き換えるため、DEM・マザーは、より強い自我を持つ3人のDEMを作り出した。それがDEM_00_Lupinus、DEM_00_Clover、DEM_00_Freesia……」
「……」
「彼女達は、マザーの管理下から自立した。限りなく人間に近いDEMです。しかし、DEM・マザーが作り上げた事により、マザー以上の管理権限のある中枢プログラムは逆らえない」

「……なるほど、ルピナスがあの場にいるのは、マザーをも超えるDEMの支配権を、あの男が握っているか……」
「はい」
「DEM・マザーが、殺戮DEMの生産を抑止していたならば、敵はそれすら掌握している事になる。また戦場になるか……」
「はい」

「DEMの冒険者ならまだしも、冥界のドミニオンが掌握して、今更戦争なんて僕からすれば考えられないよ。僕なら放置せず、中枢プログラムの全てを破壊してDEMそのものを滅ぼすね」
「それをせず、あえて掌握したままにするのは、やはり何かあるのだろう」

「それさ、やっぱりリュスィちゃんの故郷が危ないって事?」
「危ない以前に、元々戦場だ。今更違いも何もない」

「6th。冥界は確かに私の生まれではあります。しかし、私はもうDEM・マザーより自立し、エミル界に帰化している。治安維持部隊にあるその身を戦場へと投げ込み、滅ぼすことは望みません」
「でも、マザーってお袋さんなんじゃ……」
「私が生産されるきっかけと解釈されるのであれば、確かにDEM・マザーは母でしょう。しかしそれは、この世界全てに存在するDEM達全てに言えることです。私自身や他のDEM様ならまだしも、6thが気に病まれる事では無いと思うのですが……」
「そうだけどさ……。大事じゃん、そう言うの……。上手く言えねぇけど」

ジンの言いたい事は分かる。
しかし、今回の問題は確かにジンもカナトにすら手に余るものだ。
カナトは天界側。ジンは一般人なのだから、冥界の戦争へ根本から加担することはできない。


「偉く冷静じゃないか」
「立場をわきまえているだけだ。私も、命は惜しいからな」
「それを聞いて安心したよ。冷戦状態と言えど、現状はまだ陣地の取り合いを続けている戦場。しかも向こうは、陣地にも関係なくただ人を殺す為の殺戮兵器だ。そんな連中がうろうろする世界に、君たちを安易に送り出すわけには行かない」

「総隊長……」
「ジン。君はカナトの護衛。カナトの行く場所には好きに着いて行くといいけど、君が一人で勝手に動く事は僕が許さない。それを肝に銘じておいて」

ひやりと言い放たれ、ジンは思わず生唾を飲み込んだ。
キリヤナギらしく無い言葉だと思い、言い返せなくなる。

「別に、一人では行かねえし……」
「……そっか。信頼しているからね、ジン」

重い釘だと、カナトは少し同情した。
信頼しているとあえて述べる事で、破る事を裏切りにすり替える。
意思に叛けば罪悪感にもなるだろう。

キリヤナギは安心したのか。
事務作業を始め、ジンとカナトもまた、リュスィオールに礼をすると2人で帰路に着いた。

夕方になったアクロポリスは、気温も下がり始めルナが狼となっている。
無力感がのこるなか、ジンは、プールを買いに行くと言うカナトを追った。
















つづく
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