本編(リレー企画)

ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第二話

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詠羅さん原案でのリレーシナリオです。

前回の話
ヘルズ ドミニオンズ 復讐のコア:第一話

第二話

著:ロディ山



ピッ

’フォルテと、ローレライの、フカヒレ珍道中~♪’

ピッ

’ああ~、まずっう~い、もういっぱい。野菜不足なあなたにゲッコ印の超激苦あ’

ピッ

’次のニュースです。またもやアップタウン周辺で冒険者登録前のDEMが襲われ

ピッ

’さぁて今月のランキング第1位はっ、先週から2ランクアップ、今子供たちの間で人気のライギョーお兄さんによるライギョー体操第一!’

「今日は当たりな番組無いのかねぇ」

重フレームが、歯車と原動機機関から伝えられた動力に動かされている。歯車がかみ合い、それに伴って骨太な足が一歩、また一歩と歩みをすすめる。自身の身長の半分ぐらいは、足の長さでまかなわれている。上に載る旧機械時代のテクノロジーの詰まった原動機を支え、さらに搭乗者を支えるための無骨な二本の脚。腕は対照的に細い。蛇腹状の腕は、操縦席の両脇から直に生えており、今は走行中の勢いのために後ろへ流されてぶらぶらとゆれている。

東アクロニア平原。ロボは日課の鉱石堀を終えた主を載せて、早くも遅くもない速度で行軍していた。搭乗者が好みで塗り上げた青の装甲が、日差しを反射して鈍く光った。

搭乗者は、ロボの操縦桿を片手で器用に動かして、片方の手でナビデバイスを操作している。真正面から風を受けてなびく髪は銀色。彼お気に入りの茶色いライダージャケットが、首元から入り込んだ風がジャケットを膨らませ、下着をなでて通り過ぎる。旧式のデバイス画面にうつる番組名に、変な顔をしつつ、男(ロディ)は正面に視線を戻す。

そんな愚痴を言うぐらいなら、事前に番組表アプリをダウンロードして調べればいいものを、彼はそれをしようとはしない。放送局をそのときそのときで変えつつ、面白い番組にであう。そういうのも一つの楽しみだと、彼は思っていた。あまり理解を得られたことはないが。

言葉遊びを繰り返す健康食品の宣伝、浮ついた声のアイドル二人の司会、なんで人気なのか分からないとあるアニメ主題歌......最近の放送の質も落ちたように思うが、そう感じてしまうのは自分が古い人間になりつつあるという一つの証なのかもしれない。そういうことを考えると、すこし胸が苦しくなる。なんだかんだ言ってもいい歳なのだ。

「あー、やめやめっ。楽しいこと考えよう楽しいことっ」

誰に言うでもなく、騎乗ロボの上でつぶやく。楽しいこと、楽しいこと......ああ、そういえば

「!!そうだそうだ、今日はアレの更新日じゃねーかっ」

すばやく端末を操作し、アプリを起動する。月額1500Gでコミック見ほうだい、漫画のことならウィスプ堂。なかなかマニアックな作品を集めていることで有名な、漫画掲載サイトの存在を思い出す。今日は、彼の最近気に入っている作品の最新話の掲載日だ。

漫画といえば、一昔前までは紙の生産の難しさから、出版がなかなか難しく部数もかなり限られていた。初期部数が売切れてしまうと、増刷はよほど人気が無なければ難しい。しかし、突如普及した情報デバイスによってそれらの問題は解決。紙の節約にもつながるし、紙媒体のようにかさばらない。要らなくなったら削除すればいいしで、いいこと尽くめである。

本当に好きなものは紙媒体で持っておく主義だが、それ以外ならばこうして閲覧できれば問題ない。こうして、いつでも漫画を読める。自分が幼少のころでは考えられなかったことが、実現している。

「いい時代になったもんだよなぁー」

こうして良い意味での時代の流れを体感できるのも、歳を取ったものの特権なのかもしれない。そう思いつつ、デバイスを操作する。ちなみに今の彼だが、騎乗ロボの片手操縦な上にわき見運転でもあるため、騎士団に見つかると厄介なことになる。

彼の頭の中は、そんなことよりも漫画の最新話のほうに占領されていた。たしか、この前はくのいち:影忍ドラッキーが敵の策略に嵌って捕らえられて......

「......ん?」

ページが表示されようというときだった。電波の強さを表示するバーが、急激に下がり始め、突然圏外になる。

おかしい。ここはもう基地局のあるアップタウンの近くなのだし、電波が弱くなるはずはない。事実、この前もいま走っている辺りを通っているのだが、今まで電波がよわくなったことなど一度も無かった。基地局でなにかトラブルがあったのだろうか。それとも、まさかデバイスの故障?

「おいおい、勘弁してくれよぉ」

楽しみにしていたページは、機械のほうが開くことを放棄して’接続がタイムアウトしました’とエラーを吐き出してきたのをみて、ロディはため息をつく。

今日はとことんついてない。坑道にもぐってはみたがめぼしい鉱石はあらかた採られた後。面白そうな番組はやってないし、漫画は読めないし、デバイスは壊れるし、なんか頭上でごろごろうるさいし......

「......え?」

突如、自分とロボを覆い隠すほどの影が現れた。何事かと頭上を見上げると、そこには真っ黒い雲が漂っている。雲はみるみると増えて、平原の上空を支配していく。空気を震わせながら、渦を巻き、盛り上がりすき放題に形を変えていく。雲間から光がほとばしっているのが見えた。

こいつはひどい雨になる。そう思うロディだったが、降ってきたのは、雨ではなかった。平原を覆っている雲の中央あたりに、それは現れた。

巨大な魔方陣だ。幾何学的な文様を周囲に従え、中央には飛竜の翼を象った模様が強い光を放っている。黒い雲の隙間と言う隙間から、光があふれ、地上に降り注いでくる。まるで、神が地上に降臨するときのようだと、ロディは思った。思わずロボを止めて、眺める。 

「すげぇ、なんだってんだ。ウワッ」

目の前に広がる光景に眼を奪われているとき、魔方陣の中央が一層、強く光る。突如、雷鳴と閃光が、目の前に広がる世界の全てを支配した。大きすぎる音に、耳がびりびりする。閃光をもろに浴びた瞳が、じりじりと焼かれているように疼いている。強烈な熱だったのか、空気中の水分が水蒸気となってもやを発生させていた。

「な、なんだってんだよ。いったい......ん?」

まだはじけている視界の隅に、何かを見つけて目を凝らす。もやの中に何か、居る。ロディはロボから降りて、迷わずそのもやの中へ突っ込んだ。

背の短い草が燃え、青臭いような焦げ臭いような臭いが辺りに充満している。やがて、もやが少しづつだが晴れてきた。上空に漂っていたあの黒い雲も、今はだいぶちぎれて消え去ろうとしていた。さらに眼を凝らす。見えた。間違いない。人影だ。

「おい!おいっ、あんたっ!大丈夫か!」
「......うっ、うう」

人影はうずくまったまま、声にもならないような呻き声を上げている。

季節はずれのグレーのロングコートの裂け目から、、幾多ものコード類と金属質の筋繊維とグレーの肌が顔を覗かせている。人間でいう耳の部分には、何かの機械が張り着いていた。デビッドと呼ばれる、ある種族たちが自身の同属同士での通信などに使うものだと、仲間から遠い昔に説明されたことを思い出した。

「お前、ひょっとして」

DEMか。そう言葉を続けようとした矢先に、目の前のDEMの男は、ゆっくりと草むらの中へ倒れこんだ。



※※※



「で、お前はこの子をここに運び込むことにした......と」
「あのままあそこにほっとくわけにもいかねーし、混成騎士団にもお願いされたしな」
「ふむ......しかし最近この辺も物騒になったものだ」
「物騒って?」
「......お前、事件のことを知ってて保護したわけじゃないのか?」

病室とも取れる清楚な部屋で、真っ白いシーツに寝ている青年を見つつ、ロディは丸椅子に両手をついてぐるぐるまわりながら言う。

その様子をみながら、赤髪で白衣の女性は、丸い目をまぶたで半分隠しため息をした。白衣の背中では黒い翼が下がり、スカートから覗く槍のような尻尾がへたりと下を向く。

「漫画ばかりじゃなくて、少しはニュースも読めよ。これからどんどん情報化社会になっていくこの世の中で生きていくにはだな」
「はいはい、わかってますわかってますっ」

説教をはじめそうになる博士の言葉を、ロディはおおげさな手振りと声でさえぎった。

ここはダウンタウン地下。今しがたロディに、博士と呼ばれた女性の研究所である。実際には、近年アクロニア大陸に出現するようになったイレギュラー化したDEMを保護するための施設だ。簡単な修復やシステムの検査、戦闘形態のカスタムなどを行うことができる唯一の場所でもある。

あのあと、ロディは現場検証に来た混成騎士団に事情を説明。彼を博士の研究所へ送るように言われてここへ来たわけだ。

「しかし、君はつくづくDEMと縁がある......お」
「よっ、目覚めたか」

ロディは気づくと、すかさず声をかける。二人の会話中に、ベッドに眠っていた青年が目を覚ました。閉じられていた瞼を半分あけると、青い瞳が現れて、博士とロディを交互に見つめる。

「......?」

言葉を発することなく、首をかしげる彼の様子に、同じように不思議そうな顔をするロディ。博士は、言い忘れていたことを思い出した、というように言葉を発する。

「ああ、すまん。この子、簡単な検査の結果なんだがな。どうやら言語機能に不具合が生じているらしい。お前が見たという魔方陣からの強制転送の、弊害なのかもしれんな」

体にあった、少なくは無い損傷の様子を思い浮かべながら、博士は言う。

「ところでよ博士、こいつの今後なんだけど」
「’うちで預かりたい’か?」
「な、何でわかったの」

言おうとしていたことを先に言われて、ロディは面食らった顔で博士を見た。
この男とはもうそれなりの付き合いにはなる。予想は立てやすい。博士は肩をすくめる。

「お前なら、そういうと思ったんだ......案の定だったな。別にかまわんが、まずは彼に了解を得ることだな。ああ、それと簡単な検査をさせてもらった。結果、管理権限から完全に外れていて、自由意志を獲得しているところまでは確認が取れている。今後の日常生活に特に問題はないと思われる」
「お、おう」
「まったく......簡単に言えば妄りに人を襲わない、’安全だろう’という確認はとれたってことだ。.お前に言っておく、これからは情報機器の時代だぞ。古い職人気質の技術屋気取りなのはべつに悪くはないが、プログラムの勉強ぐらい少しはしろ。だいたい彼らDEMと付き合っていくというのなら」

博士は未だに勉強不足なロディに対し、説教をしようとしたが、たぶん無駄に終わるだろうと見込んで中断する。
ロディはいつの間に持ってきていたのか、棚の資料で必死に博士の言っていた言葉を探している。

彼の理解が及ぶまでとなると、まだだいぶかかることが予測できたので、博士はもういいという風に言葉をつづけた。

「......まぁ、いい。なんでもない。あと、定期的にここに来て診せてほしい。言語機能もそうだが、他にも障害がないか調べてやりたいし、可能なら修復してやりたい。できるところまでの修復ができたら、そのときは改めて冒険者として登録させてやればいいだろう。......今日のところは、うちで預かるぞ。私のほうからも聞いておくから、返事は少し待て。自己修復が働いているとはいえ、安静にしておいたほうがいい」
「おう、じゃあ、また明日なっ......えーと、名前は」

DEMの名を呼ぼうとしてロディは言葉に詰まった。
そういえば、まだ聞いていなかったっけ。DEMの青年は迷った顔をするロディを、虚ろな眼で見つめている。

よく見れば、だいぶ整った顔をしていると、ロディは思った。白い髪、晴天のように青い眼、すこし憂いを帯びた眼差し。絵画かなにかに出てくる人物に、いそうな感じだ。

ぼーっと顔を見ていたロディに、博士が助け船をだした。

「一応、システム欄にはDEM_Typeθ SetaRicaと記載されていた」
「ああ、そう、セタリカね」

セタリカ、彼の名はセタリカというらしい。
とりあえずこの部屋の時計を見る限りではもうだいぶ遅いわけだし、彼もまだ本調子には程遠いようだし、ここは退散することにしよう。

「......えーと、じゃあセタリカ。また明日なっ」

そう決めると、ロディは博士とセタリカに別れを告げて、研究所のエレベーターへと足を向けた。



※※※



研究所を後にし、上昇するエレベーターの中で、ロディはあっと何かに気づいたような顔をした。

「やばい、また連絡し忘れたっ」

この前も連絡を忘れて何日も帰らなかったことがあり、しこたま怒られたばかりだ。デバイスは何のためにあるのかと、くどくど言われたっけな。

同居人の一人、生真面目すぎるドミニオンの少年の姿を思い返しながら、頬を掻く。
自分からすれば、あれは音楽やラジオ、あるいは漫画を見るためのツールだ。あまりメールや通話はしようと思わない。そういえば、まだ重要なことを忘れていたような気がする。

「メール......げっ」

あわててデバイスを開く。生真面目なドミニオンからのメール。

’僕は今日遅くなると思います。ロディさん先についたらお留守番してるヒルダさんと簡単な家事はしておいてくださいね。’

家事......はこの際どうでもいい。
今日は、本当なら久々に彼女と二人きりになるタイミングがあった日でもあったのだ。
ただDEMの強制転送騒ぎがあり、セタリカを博士のところに運び込んだりなんだりしたことにより予定は完全に狂ってしまった。

久々に、彼女と’いろいろとしたかった’が......まぁ仕方が無い......よな。もう一人の同居人、後ろで縛られた茶色い髪をした愛しい人の、非難じみた眼差しを想像する。不覚にも、かわいいと思ってしまい、鼻の下を伸ばす。同時に、生真面目な同居人からの小言も浴びることになるのも想像してしまって、気分が沈む。

昇降エレベーターが地上へと到着するなり、ロディは愛機のアクセルをいっぱいに踏み込んだ。
とりあえず二人にはどういい分けしよう。そうだセタリカの事も話さなくてはと、考えをめぐらせるのに忙しく、周りのことに注意が行かない。そんな状況で騎乗ロボの操縦などしているので

「おっわ!」

ロボの足がつっかえて、派手に転がり落ちることになるのだ。付近にいた冒険者たちや住人たちが、頭の上で星をまわしているロディを見物している。見回りの騎士団がこちらに向かってきているのが見える。

ああ、今日はほんとうについてない。
はじける視界の隅で、騎士団員が怖い顔で違反の切符を切っているのを見ながら、そんなことを思った。



※※※



「やれ、ルピナス」
「イエス、マイ、マスター」

男は壁際に追い詰めた青年を、騎乗ロボの座席から愉快そうに見下ろすと、傍らの少女に命令を下した。ルピナスと呼ばれた少女は、マスターと呼んだ男が何を望んでいるのか知っていた。だから、その通りに行動する。

彼女はおびえた顔をする青年の胸に、手を突き入れた。赤いドレスを血のような循環オイルが汚し、顔の半分をも濡らしていくが、そんなことも気にせずに彼女は胸の中をまさぐる。ぐちゃぐちゃという音をさせながら、やがて一つの物体を引き抜く。つられて引っ付いてきた色とりどりのコード類を、片方の手でぶちぶちと取り除くと、全貌が明らかになった。

コアだ。CPUを含む彼らDEMの心臓部。彼女は、取り出したそれを、騎乗ロボの上でふんぞり返っている男に手渡した。男はオイルまみれのコアを持っていた布で拭き、輝きを確かめると、口角を上げる。

「これで......あと2つ、もう少しだ。もう少しで」

工具かばんに突っ込む。かばんの中には、様々な色をしたコアが宝石のような輝きを放っていた。その数はいまのを入れて6つ。

思ったよりも順調だ。これなら、ドミニオン世界で準備をすすめている部下たちの下に、予定より早く戻れるだろう。そして、戻ったとき、そのときが自身の野望の達される日になるのだ。

「くっ、くくくく」

愉快な気分になって、男は声を上げて笑った。

少女は虚ろな瞳のまま、騎乗ロボの隣で待機し、コアを抜き取ったDEMを見つめている。一瞬、胸が痛む感覚が少女を襲う。しかし何らかの気持ちが沸き上がる前に思考を奪われ、頭の中が数字と文字の羅列によって占領されてしまうのだった。





つづく
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